「自力で10億ドルを稼いだ人たち」の哲学を調査した本
ビリオネアにまつわる誤解
若くして成功している
- 調査対象の120人のうち7割が30代以降に「成功のきっかけをつかんだ」と回答した
- IT業界など若くしてビリオネアになった人たちがフィーチャーされやすいため、この誤解が生まれている
IT領域が多い
- ビリオネアの中でIT業界出身の人は2割にも満たず、金融や消費財の分野とあまり変わらない割合である
ブルーオーシャンを開拓した
- ビリオネアになるには新たな市場を切り開く必要があるという誤解があるが、ビリオネアの8割は既存のレッドオーシャンで成功している
一夜にして成功を収めた
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ビリオネアは「ある日突然現れてたちまち成功した」ように見えるが、現実には長い間試行錯誤を重ねたり、自己投資してきた人が多い
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調査対象のうち半分以上は18歳以下で何らかの仕事を経験しており、3割近くの人は22歳以下で最初の会社を立ち上げている。30歳以下で起業を経験した人の割合は75%近くにもなる。
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また、仕事を通じてスキルを磨き、努力して才能を伸ばしている。
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75%のビリオネアは営業の仕事を経験しているし、70%は30になる前に部門の運営レベルの仕事を任されている
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94%のビリオネアは爆発的なヒットをつかむまでに複数の事業を立ち上げている
ビリオネアに共通するのはマインドセット
- ビリオネアマインドとは矛盾や対立を包含する思考
多くのビリオネアに顕著なのは、普通の人がばらばらに捉える物事を、ひとつにまとめる能力だ。矛盾する考えや行動を排除せず、自分のなかでうまく共存させる。正反対のものを抱えながら、それでも思考が混乱しない。
アイデア - 共感力と想像力で未来を描く
ビリオネアは顧客が抱えているニーズを読みとる共感力を持っている。実際の体験や出会いを通じて、人びとが潜在的に求めているものを感じとる能力だ。それと同時に、誰も思いつかないような製品をイメージする想像力も持ち合わせている。共感をベースに、その先を思い描く能力だ。 共感力と想像力の融合が、爆発的な大ヒットを生みだすのである。
- 顧客が求めているもの、これから求めるであろうものを感じ取る共感力。共感をベースにまだ見ぬ商品を作り上げる想像力。2つの力が出会った時に爆発的なアイデアが生まれる。
常に人々のニーズを見逃さないように共感力を磨き、それをビジネスに発展させるべく想像力を働かせている。
共感力
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ニーズは「共感力で見つける」
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共感力が人一倍高くないといけない
アイデアのきっかけは共感力だ。共感力はビジネスの勘を養い、潜在的な顧客のニーズを見抜くことを可能にする。 そもそも売れる商品とは多くの人のがほしいと感じる商品だ。
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単なる顧客志向は顧客の今だけにフォーカスしがち、顧客の「未来」の形に共感する必要がある
想像力
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優れたひらめきは一瞬の魔法ではなく、地道な積み重ねの成果である。
ビリオネアがブレイクするまでの過程を見ると、それはけっして偶然でも魔法でもないことがわかる。知識を蓄え、経験を積み、ひとつのことにじっくり取り組んできた成果として、あるとき最高のひらめきが訪れるのだ。
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すごいアイデアは幅広い知識と経験から生まれる
クリエイティブな人間は経験に対して開かれている
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ビリオネアは好奇心と冒険心が強く、これらを満たすために情報収集を欠かさない
時間 - 最速で動き、ゆっくりと待つ
ビリオネアは複数の時間軸を同時に意識する。 タイミングが予測不可能であることをビリオネアは知っている。だから「短気」と「気長」の両面を同時に持ち合わせる。チャンスをつかむために最速で動く一方、機が熟すのを誰よりもゆっくりと待つのだ。
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機が熟すのを誰よりも忍耐強く待ち、そのタイミングが来たら誰よりも迅速に行動する
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波が来るタイミングは予測不可能であることを知っているから「短気と気長」を使い分ける
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必ず成功できると信じて時機を待ち、着々と準備をすすめる
つねに手と頭を動かし、試行錯誤と改善を繰り返しながら、アクティブにチャンスをまちかまえるのだ。
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「焦らず、楽しみながら、最速で動く」
- 時間のプレッシャーはクリエイティビティを弱らせる
ビリオネアは時間に追われることを嫌う。無理なスケジュールは組まないし、できる以上の仕事量を引き受けることもない。
時間に追われて焦っていたらいい仕事はできないと知っている。
- さらにクリエイティビティの低下は持続する
時間に追われる日が一日あるとそのあと数日はクリエイティブな成果が出せない
- 目の前のことに全力で集中し、周りに忙しさを見せない
ビリオネアは長期的な視点を常に持ちながら、あたかも目の前の仕事しか存在しないかのように行動する
- 自分の時間を意図的に守る
行動 - 創造的にルーティーンをこなす
ビリオネアはクリエイティブなアイデアを考えるのと同じくらい熱心に実務をこなしている。逆に普通の人ならルーティンワークと捉えるような日々の仕事にも創造性を発揮し、新たな価値を生みだすことができる。
- 壮大な目標と愚直な実行を両立する
リスク - 現在の金銭的損失よりも将来の機会損失を恐れる
ビリオネアはリスクをあまり好まない。ビリオネアが記にするのは今あるお金を失うリスクではなく、将来の可能性を逃すリスクだ。
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プロスペクト理論の利益と損失とでは損失の方を課題に評価する「損失回避性」と真逆である。
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失敗を恐れない程度には経験を積んでいる
- 安全網があるから危険な賭けをする時にためらいなくいける
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全てを賭けて自分を危険に晒すことはなく、上手く行かなかった場合の次善の策を考えておく
仕事相手 - 自分とは正反対の人を仲間にする
並外れた成功を手に入れるためには、ありとあらゆる能力が必要になる。だからビリオネアは自分にないものを持った人を仲間に引き入れる。正反対の人とコラボレーションすることでビジネスの限界を突破するのだ。
- ビリオネアの陰にはかならず実務に長けた相棒が存在している
- 全体の50%以上が自分にないものを持つパートナーと長期的な協力関係を結んでいる
- 重要な能力は「自分と正反対の人を受け入れ、協力関係を築き上げる力」
- 正反対の人と組むのだから本気でぶつかれる関係が重要
組織のビリオネアマインドを活かす
- リーダーがやるべきことは、ビリオネアマインドを持つ人を自由にさせるだけではなく守ってあげること
ビリオネア・マインドを殺さないためにリーダーがやるべきことは、彼らの行動をはっきりと擁護することだ。単に好きにやらせるだけでなく、なぜ好きにやらせているのかを社内に説明し、納得させなくてはならない。 一見型破りな行動が、なぜ必要なのか。その行動がどのように新たなマーケットの開拓や、すぐれた製品や、これまでにないブレイクスルーにつながるのか。そうした理由を丁寧に説明し、周りの社員に理解してもらおう。破天荒なアイデアや行動の防護壁となり、周囲につぶされないように守ってやるのだ。
所感
- ビリオネアに対する誤解はロングゲーマーであることの重要性を改めて定量的なデータを元に確認できて良かった。
- 大きな事業の種を見つける力を「共感力」と「想像力」に分解する解釈は新鮮で学びがあった。自分は想像力はあると自負しているが逆に共感力が乏しいため、共感力を磨く努力をしていく。
- 「時間のプレッシャーはクリエイティビティを弱らせる」という話は月並みではあるが、自身の現状に刺さった。表題として書いた「焦らず、楽しみながら、最速で動く」を新たな仕事の哲学とする。