ビズリーチの創業について書かれた本
南氏の性格の3要素
- 執念深さ
- 負けず嫌い、しつこさ、成功するまでやる
- 手堅さ
- 何かを始めるときには徹底的に調べ抜き、リスクを洗い出し、絶対にいけると確信するまで決断は下さない
「石橋を何度も叩き割って、事業化しなかったプロジェクトは一つや二つではない」と言うように、念には念を入れて物事を進めるのが南のやり方だ。
- 青臭さ
事業計画の策定でも「目先でいくら儲かるか」といった話にはほとんど興味を示さない。そんな話をすると、お前は世の中をどう変えたいんだと逆に質問攻めにされる。
- 自分は何者か、何ができるのかを深く理解する
「多くのリーダーは、プライドが邪魔して『自分はできない』とは言えない。しかし、南はあっさりと『俺には無理』と言う
徹底的なリサーチで課題の本質を特定する事業選定
- 業界経験は関係ない
その業界で働いていたからという自分の経験や知見は、事業の立ち上げにほとんど影響を与えない。 その代わり、自分の中で構築した事業立ち上げの「成功パターン」を忠実に踏襲する。
- 圧倒的な好奇心を持つ
「小澤さんは、人間の根源的な欲求とは何かを常に考えている好奇心の固まり」 南がこう表現するように、小澤の「知りたがり」の精神は尋常ではない。
興味を持ったことは何でも率先して試し、自分で体験して物事の本質と構造を理解する。物怖じしない性格と大胆な発想、バランス感覚のあるコミュニケーション能力が持ち味で、頭の回転の速さと機転を利かした瞬発力には、三木谷も一目置いていた。
- 成功事例を徹底的に分析して学び尽くす
「いいか、うまくいっているビジネス、成功している事業には必ず理由がある。それが何か探り当てることから始めろ。徹底的に調べて掘り下げて、その本質を見つけ出せ」
事業づくりの出発点は、自分が解決したい課題の本質を見つけることからだ。 それをいかに早く、的確に探り当てられるかが事業の成否を決める。 そのために小澤は「要素分解」という言葉を頻繁に使った。
要素分解とは事業を細かく要素分解すること。 それぞれの要素について、世界中の成功事例を調べていく。 世の中の大抵のことは、自分が初めて考えたものではなく、誰かが既に実践している。 まずは謙虚にその事実を理解し、成功事例をできるだけ集めて、そこから意思決定の判断軸をつくっていく。
大切なのは、課題の本質であるセンターピンを見抜くこと
僕は仮説づくりと言っているけど、ある領域の事業に進出しよう、あるいはうまくいってないものを立て直そうというとき、大抵世の中には、既にうまくいっている会社があるわけです。そこで、うまくいっているケースを世界中から5社ぐらい見つけて、つぶさに調べていく。すると、見えてくるものがあるんです。
- 机上だけではなく足でも徹底的に調査する
当時、会議以外の時間に、会社で小澤の姿を見かけることはほとんどなかった。小澤は大半の時間を割いて様々な関係者に会い、徹底的に調べ尽くしていたのだ。
それが課題の本質を捉えるための必須条件だということを、のちに理解した。 徹底したリサーチは、事業づくりの大切な基盤である。
島田も、小澤と同様、徹底的に現場を歩くタイプの経営者だ。
- 「常識をいかに疑うか」
事業づくりという点で、南はもう一つ、大切な姿勢を小澤から学んだ。それは「常識をいかに疑うか」という視点だ。
- なぜその課題はまだ存在しているのか?
三木谷も、小澤や島田と同じように調べ抜くことの大切さを南に教えた。
「俺が知りたいのはお前のアイデアではない。なぜ、この課題がまだ存在しているのかということだ。お前が考えていることなんて、既に何万人もが考えている。それなのに、なぜ今もその課題が解決されずに存在しているのか。業界の構造や歴史を徹底的に要素分解しろ」
事業立ち上げ時の心得
- 本質にこだわって、「まずは70点」を目指す
「まずは 70 点を目指そう」
現場が混乱した時、小澤はしばしばこんな表現を繰り返した
- 計測できないものは改善できない、計測を徹底する
三木谷はこう言った。 「どんな取り組みも、スプレッドシートに落として考えられなかったら意味がない。頑張った成果を測定できなければ、何のために努力しているのか分からない。とにかく測定できる方法を考えてみろ」
大義を重視する
- 「何を自分の課題にする」か、大義を持つ
「いいか南、**課題は無数にある。問題は、そこからどれを自分の課題として選ぶかだ。**それは、どれだけの人の課題を解決するのか。事業としてやる以上、社会にインパクトを与え、世界を変えるようなスケールの大きな問いに向き合わなくては意味がない。そこに、大義があるのか」
人は誰しも迷う。苦しくて立ち止まることもある。それでも前に進むには、最初に自分たちが目指すものが何かという意義を明確にするべきである。
三木谷は、南に繰り返しこう説いた。
「ヨーゼフ・シュンペーターという経済学者の言葉で、アントレプレナーだけが世の中を変えるというものがあります。アントレプレナーの和訳は起業家ではなくて、実業家です。**実業によってしか世の中は変わらない。**政治では世の中は変わらないんだと思っています」
「**実業家のなすべきこととは何ぞやといえば、それはやっぱり社会を良くすること。それが欠けていては、事業として意味がないとは言わないけれど、世の中を変えていくことはできない。**それが自分のスタイルということなのかもしれない。人間には迷いもある。立ち止まるときもある。それでも、俺たちがやりたいことはこれなんだということを明確にしておく。錦の御旗が重要だということです」
- 王道でやる
——「王道でやる」ことの真意は何ですか。
「しっかりした土台をつくりながら、それを実行するということです。骨組みが堅牢なビジネスをつくらないと、人間は弱いからすぐに短期的な利益を追い求める組織になってしまいます。小手先のアイデアだけで続けようとしても、いずれ行き詰まります。」
- 三木谷氏の課題選定基準
——無数にある課題の中からどの課題に取り組むのかを選ぶ判断基準は何ですか。
「僕自身がおもしろいと思えるか、というのが大きいです。楽天市場をモール型ではなくマーケットプレイス型のビジネスモデルにしたのは、地方の中小店舗でも日本全国に向けて商売ができるようにするためです。そういう世界をつくると痛快だよね、おもしろいよね、と思ったことがきっかけです。」
- 現状に満足しない、あくなき課題解決意欲
「三木谷さんには、会うたびに『現状で満足しているわけじゃないよな?』と問われる。**世の中はまだ課題だらけだ。世の中をより良くするために自分もまだまだやる。**だから南ももっと頑張れ、と」 果てしない経営者としての生命力、あくなき事業意欲を持ち続けることが、世の中を変える最大の要素かもしれないと、三木谷の生き方を見て、南は憧れていた。
南氏の「問いを立てる」フレームワーク
次のような3つのステップを辿る ① 自分の問題意識に引っかかる課題を見つける(トリガーを引く) ② 課題を徹底的に調べて要素分解をし、本質を見極める(センターピンを見つける) ③ 本質的な課題解決の方法を考えて端的な言葉や数字で表現する(打ち出し角度を決める)
- 課題を見つける
南の課題発見はまず、本人に内在する問題意識から始まる。 自分の中に浮かんだ喜びや怒り、不満や悲しみといった感情が、課題発見の着火点となっている。 「日々情報に触れていると、時々、ピンとくる話題やニュースがある。『これって何でそうなっているんだっけ』といった具合に引っかかり、掘り下げていくと課題の端緒が見えてくる」 南本人は問いが生まれる瞬間を、思考を発動させるという意味で「トリガー(引き金) が引かれる」と表現する。
- 課題の本質を見極める
トリガーとなる課題の〝タネ〟が見つかったら、次はそれを徹底的に調べ倒して深掘りしていく。 最初はマクロの視点で幅広く、政府の白書や研究機関のリポートなどを読み込みながら、課題を構造で捉えていく。 その後、ポイントを絞り込み、ディテールをひもといていく。楽天イーグルス時代に小澤から学んだ「要素分解」に相当する作業だ。 分解した要素をさらに細かく調べ、本質に辿り着くまで繰り返す。最終的に課題のセンターピンを見つけ出すことが、2番目のステップのポイントだ。
- 打ち出し角度決める
センターピンを探し当てたら、最終段階の打ち出し角度の決定に進む。 ここでは、課題の本質を分かりやすく端的な言葉で表現する。 いわば企業ミッションや事業コンセプトを決める作業だ。 楽天イーグルスでは目指す球団の方向性を「ベースボール・エンターテインメント・カンパニー」として、ベンチマークを他球団ではなく、ディズニーランドや居酒屋とした。 仕組みやビジネスモデルが明確なほど、課題解決に向けたベクトルは、はっきりする。 目指す方向や解決策を端的なフレーズで表現することで、周囲に浸透しやすくさせる。 加えて、目標に至るまでのプロセスを数値化して測定できるようにして、達成度合いを客観的に評価できるようにする。
- 「ピンとこない」ものには取り組まない
辞めた直後、この先1年間は働かないと決めていた南は、世界を旅しながら興味のある分野について片っ端から調べていった。環境、エネルギー、医療……。業界のリポートや政府刊行物、投資家向けの報告書を丹念に読み込み、次のビジネスの可能性がどこに転がっているかを探っていった。
マクロの視点から社会や産業の動きを分析する際、南は次の二つの要素に着目する。 一つは社会構造の変化。少子高齢化など人口動態の変化が一例だが、それまでの社会システムが前提としていた条件が変化するとき、大きなひずみとチャンスが生まれる。 もう一つは技術の進化だ。インターネットやAI(人工知能) の台頭によって、まさに今、我々が目の当たりにしているように、既存の産業構造がガラリと変わる際にも、大きな機会がある。
ただし、最初に調査対象としていた産業はどれもピンとこなかった。医療やエネルギーなどは市場が大きく、取り組むべき社会的意義もある。インターネットによって産業構造が変わっていくことも自明だった。 それでも、自分の中で「これだ!」という手応えがなかった。 そんな南が転職市場に注目するようになったのは、いくつかの偶然が重なったからだ。
ありのままをさらけ出して信頼をつくるチーム
- 誰とやるかの重要性
どんな課題を設定するかは大切だが、誰とやるかはそれ以上に大事だ。
南は「事業づくりには役割分担が大切だ」という考え方を意識していく。特に創業期は役割が頻繁に変わる。「これしかできない」「これしかやりたくない」と言っている余裕などない
- 最後は情理
仲間を巻き込むには共感も大切だが、その基盤には信頼が欠かせない。それを築くには、何よりもまず自分が弱さを見せ、ありのままをさらけ出すことが大切になる。
人を動かすことに長けているのは、情理を備えた経営者の場合が多い。 「世の中をこう変えていきたいから、一緒にやりませんか」と論理的に説明されても、首を縦に振る人は少ないだろう。だが「あなたがいなければダメなんです」と感情に訴えられると人は心が動かされる。その意味で、竹内を最後に動かしたのは南の情理だった。
リーダーが目標達成に異常なまでに執着することで、達成グセをつける
目標達成が当たり前の組織と、未達成でも仕方がないと考える組織では、天と地ほどに業績が違う。「達成していないことが格好悪いというカルチャーをいかに早くつくるかが大切」と多田は言う。
では、どうやってそんな組織文化をつくるのか。多田は「チームリーダーが目標達成に執着すること」と語る。
1時間ごとに進捗状況を確認されると、さすがにメンバーも「この人は本気だ」と感じるようになる。
組織を守るのは業績
「自分は部下とたくさん飲みに行って、信頼関係を構築しているつもりだった。だが業績が下がった瞬間に社員は辞めていく。それまでの努力はほとんど意味がない。だから、経営者は業績を伸ばすこと以外は考えない方が良い」
「どんなに強い絆で結ばれていると思っていても、業績が悪化すると、人はこんなに簡単に辞めていくのか、と。成長がすべてを癒やすのはその通りだし、そのためにも目標を必達する文化をつくることが大事だと肝に銘じた」
- 人が我慢できるのは3ヶ月まで
多田は信念として、3カ月連続で営業目標を未達にすることを許さない。仮に3カ月目が未達になりそうなら、目標を下げてでも達成にこだわる。 売上金額が同じでも、それが達成か未達かで営業メンバーの受け止め方が変わると知っているからだ。
それ以上未達が続くと、メンバーは水面下で転職先を探し始める。士気が下がり、行動量も増えないため、次の目標を達成できないという悪循環が始まっていく。
だからこそ多田は、あと1%や2%で目標達成という状況では、鬼になる。そこで踏ん張れるかどうかが、人をつなぎとめられるかに直結するからだ。
採用の心得
- 選ばれる会社になるために意識すること
一つは、採用の段階で求職志と意思をしっかりとすり合わせること。 相手が人生において何を実現したいのかを把握し、互いの意志や希望、目標が本当に一致するのかを納得するまで語り合う必要がある。 必要であれば何回も会い、何時間でも過ごして、その人の本質を知る努力を続ける。 「だから、面談では自分も素っ裸になる。過剰に自社を良く見せようとプレゼンテーションしたり、社内の実態と外れたことばかり並べて入社してもらっても、結局は化けの皮がはがれてしまう。そのときに崩れた信頼関係は取り戻せない」と南は言う。
もう一つは、会社が常に変わり続けることだ。 会社が選ばれるには、なぜその人がこの会社で働きたいのかを知り、それを実現できる舞台を準備しておかなくてはならない。
- 個人の時間を奪わない
二つ目は生産性の高さ。
個人が自分に投資する時間を会社が奪わないということでもある。 「急速に変化する時代には、会社が提供できる学びには限界がある。仕事中は仕事から学び、仕事以外の時間も自分に投資するという概念を持たなくてはならない。時間と成果の概念を理解しておくことは、選ばれる会社であるためにはとても重要なことだ」と南は考える。
問いを立てる力
- 自分を深く理解する
「問いを立てる力」とは何か。 それは、「自分は何者か」を理解する力である。 あなたには、想像するだけでじっとしていられないほどワクワクすることがあるだろうか。あるいは考えるだけで眠れなくなるほど憤りを覚えることはあるだろうか。時間を忘れて夢中になり、没頭するものはあるだろうか。
- 「内なる問い」と「外向きの問い」の接点に、自分が本当に解くべき課題が見つかる
自分が本当に取り組むべき課題。 それは冒頭に示したように、内省を重ねて導き出した「内なる問い」と「外向きの問い」との接点に、湧き水のようにあふれ出すものだと感じている。二つの「問い」の答えがぴたりと一致したとき、人は大きな山を動かす力を獲得するのではないか