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4/ Blitz Scaling

Reid Hoffman氏が2018年に書いた名著

『Zero to One』『The Lean Startup』に続いてスタートアップ3大レジェンド本の一角を改めて読んだ

以下、個人的まとめメモ

Blitz Scalingとは

  • 不確実な状況で、効率を犠牲にしてスピードを最優先し、あえて高いリスクを取って大きく踏むことで、競合を突き放して市場シェアを奪うハイリスク・ハイリターンの戦略

インターネットというグローバルかつ高速な流通チャネルによって、ビジネスにおけるネットワーク効果の重要性が増した。ネットワーク効果には正のフィードバックがかかる。つまり、他に先駆けたサービスが驚くほどの優位性を築けるようになる。

インターネット時代では生き残るためには一等賞を取らなくてはならない。

シリコンバレーの成長企業に共通しているのは「ハイリスク、非効率(非合理的)、無謀、一か八か」の賭けに勝って圧倒的な成長を手にしたという点だ。

会社がBlitz Scalingしているとき、リーダーはたとえ 確信の度合いが100%にはるかに届かない場合でも、 とにかく決断を下し、断固としてその決断を守りぬくべきだ。

ライバルに先駆けて動くためなら、間違った決断をして、その結果、大損害を被るリスクを受け入れねばならない。

性急な決断が失敗となり、大きなコストが生じるリスクがあっても、決断が遅れることによるリスクのほうがはるかに大きい。

  • 典型的なスケーリングのシナリオでは、まずはプロダクトを立ち上げ、PMFが確認できた時点でBlitz Scalingにシフトする

Google、Facebookなどの急成長企業はまず伝統的なスタートアップの成長戦略でスタートした。そしてPMFが確認できた時点でBlitz Scalingにシフトしている。

そしてライバルを打倒し、市場を支配するだけの臨界質量を獲得している。その後ビジネスが成熟した段階で成長速度を緩め、ファストスケーリングに戻り、最後に市場の支配者になった段階で、伝統的な効率と安定性を重視する成長戦略に落ち着いている。

Blitz Scalingの5段階のステージ

  • スケールアップの過程で最も分かりやすく影響の大きい指標である社員数でステージを5段階に分類する


Blitz Scalingを実現するために必要な3つのイノベーション

Blitz Scalingのような急速な成長を遂げるためには、以下の3つのイノベーションが必要

1. ビジネスモデルのイノベーション

  • 急速な成長 (=指数関数的な成長) が可能な革新的なビジネスモデルを発明・設計することが必要
  • 一般的に注目されるテクノロジーのイノベーション(またはプロダクトのイノベーション)は新しい市場を生み出して既存市場の変革のトリガーとなるため重要だが、単にテクノロジーのイノベーションだけでビジネスモデルは既存のものを当てはめたスタートアップは急速な成長を遂げることができない傾向があった

世界で初めてブラウザを開発したネットスケープは、独自の技術革新で新しいビジネスモデルを開発するのではなく、ブラウザを有料で販売するという既存のビジネスモデルを選んだ。

一方、ライバルのMicrosoftはビジネスモデルを十分に研究しており、巨大な会社規模を生かす方法を正確に認識していた。最初の「ブラウザ戦争」でMicrosoftはWindowsコンピュータすべてにInternet Explorerを無料でプリインストールしてきた。これで、ネットスケープの有料で販売するというビジネスモデルは事実上破壊された。

Googleの将来性を酷評していた人々が見落としていたのはGoogleのビジネスモデルのイノベーションだった。当時のインターネットを支配していた米国ヤフーやライコスは、マスコミ時代の広告モデルを踏襲していた。これに対してGoogleは、広告主自身がオンラインからセルフサービスで広告を出稿できるようにした。また広告料金については、オークション方式を採用した。Googleはオークションの決定要素にさらに改良を加え、単なる価格競争ではなく、記事への適合度や広告の質を考慮できるようにした。広告料金の支払いについても何回表示されたかではなく、購入に結びつくクリック数をベースとする成果主義を取り入れた。この「購入意思」をベースとするモデルは、表示回数ベースに比べてはるかに高いクリックあたりの利益を確保できたため、Googleに莫大な粗利益をもたらした。

  • 急速な成長を遂げるためにはビジネスモデルのイノベーションも必要

カギとなるのは、新しいテクノロジーを潜在的な顧客に効果的に提供する方法と、急速に巨大化しても高い利益率を維持できるビジネスモデルだ。

真の価値創造は、技術の革新とビジネスモデルの革新が統合し、全く新しいサービス、プロダクトが生まれたときに初めて可能となる。

革命的なビジネスは、バカげたアイデアに見えることが多い。そのビジネスモデルは定義からして実績を示せず、なぜうまく行くかという説明もできないからだ。

真の天才は大抵の場合、テクノロジーオタクだけではなく、ビジネスオタクでもあるのだ。

指数関数的成長が可能なビジネスモデルに必要な4つの要素

前提: プロダクト・マーケット・フィット(PMF)

果たして自分たちはこれまで誰も気づかなかった大市場を発見したか、またそこにアクセスできるほどプロダクトに独創的なメリットあるいはアプローチがあるか?自分たちが十分に先行するまで、ライバルがこのチャンスに気づかずにいるか?

① これから拡大する大きな市場規模

指数関数的成長が可能なほど大きな市場を選ぶ。

新しいコンセプトによって市場をディスラプトしようとしている場合に、1910年に自動車産業の規模を当時の馬の数から推測したような間違いをしてはならない。

10億ドル規模のビジネスのほとんどは1000万ドル規模のビジネスとしてスタートしている。

② ディストリビューション - 既存ネットワークの活用とバイラル性
  • 既存のネットワークにいかに乗っかってユーザーを獲得するか

Airbnbは、部屋のホストがオンライン案内広告の大手であるCraigslistにクロス投稿できるボタンを作成し、「クロス投稿すると収入が平均付き500ドル増加する」と売り込んだ。

  • バイラルする仕組み
    • バイラルするサービスは無料である必要がある

Facebookは大学ごとにサービスを展開していったが、強力な口コミを獲得するために学生の過半数がサービスのスタートを望むまで意図的に展開を控えた。

③ 利益率の高さ
  • ソフトウェアビジネスの利益率の高さ

本書で取り上げる高価値企業の大部分は粗利益率が60~70パーセントであり、中には80パーセントを超えているものもある。

④ ネットワーク効果
  • 正の外部性 - 加入者が増えるほどネットワークの価値が高まる

テクノロジー企業がアーリーアダプター市場からメインストリーム市場に移行しようとするときに「キャズム」、つまり重大な問題に直面することが多いとムーアは言う。そこで企業はまずニッチな市場に焦点を当てて足場を築き、そこから周囲へと拡大していく。

このボウリングピン戦略はネットワーク効果ビジネスにとって重要度が高い。

⑤ オペレーションの拡張性

必要な人間が少なくて済む、またはオペレーションをアウトソーシングする方法があるビジネスモデルを考えることだ。

指数関数的成長が可能なビジネスモデルのパターン

前提: 物理的なモノではなくビットを売る

1990年に未来学者のジョージ・ギルダーは著書『未来の覇者』にこう書き、先見の明を示した。

「20世紀の核心をなす出来事は、物質の地位低下だ。テクノロジー、経済、政治、あらゆる面で物理的資源としての富は、価値と重要性が着実に低下した。逆に知的能力は物質的能力を凌駕していった」

① プラットフォーム
② フリーミアムモデル

「無料」は、ディストリビューションとバイラル性を促進するツールとして圧倒的に強力だ。同時にネットワーク効果を効かせるために必要な臨界量のユーザーをできる限り素早く集めるのにも役立つ。

③ マーケットプレイス

マーケットプレイスが強力な理由は、ネットワーク効果の両面(買い手と売り手)を利用できることが多いためだ。

④ サブスクリプション
  • 売り切りパッケージソフトウェアとは違い、従量課金にできるのでSMBにも市場を拡大できた
  • 一定規模にスケーリングすると売上予測の確実性が向上する

売切モデルに比べてサブスクリプション・モデルはキャッシュフローで不利であり、データセンターとオンラインサポートのために追加の人員が必要になる。こうした点には当然懸念があったが、これらが大きな問題になるのは既存企業の場合だった。セールスフォースやワークデイなどの新しいSaaSネイティブの企業は当初から新しいビジネスモデルを中心に構築されていた。つまり、オンプレミス利用を前提とした売切モデルをサブスクリプション・モデルに変換しようとする既存の企業よりはるかに有利だった。

⑤ デジタルグッズ販売
  • LINEのスタンプなど
⑥ フィード

ニュースフィードの真の力は、サービスが現実に利用される度合い、つまりユーザーエンゲージメントを促進するところにある。これは広告収入を長期的に確保できるようにする。

指数関数的成長が可能なビジネスモデルのイノベーションを生み出すヒント

① ムーアの法則
  • 「コンピュータの計算能力が18ヶ月ごとに2倍になる」という有名な法則
  • コンピュータの処理能力は向上する という未来に賭ける

リード・ヘイスティングス(Netflix創業者)は、「1997年に最初に資金調達を始めたとき、5年後には殆どがストリーミングになると考えていた。ところが2002年になっても、どこを探してもストリーミングなんかできやしなかった。そこでわれわれは『それなら2007年にはネットフリックスの事業の半分はストリーミングになっているだろう』と考えた。2007年になったが相変わらず何も変わっていない。そこでまた予測をやり直した。ありがたいことに、今度は良い方に外れてくれた。2012年にストリーミングはビジネスの60%を占めるまでに成長していた」と語った。ヘイスティングスの予想よりもストリーミング化には時間がかかったが、ムーアの法則は最後にはヘイスティングスに勝利をもたらした。

② コンピュータによる自動化
  • コンピュータが処理可能な業務であれば、コンピュータは人間よりも圧倒的に高速で安く、正確である
  • コンピュータに働かせることで指数関数的な効率化を図る
③ 継続的改良
  • 最初からいきなり最適なマーケット適合性を求めるのではなく、継続的に改良することでマーケットに合わせていく
④ 反逆的思考
  • 「自分だけが賛成している重要な真実」に賭ける
  • 特に賢い人々が反対していること

反逆者であることは、巨大なテクノロジー企業を構築する上で決定的な要素となる。ディストリビューションやネットワーク効果など成長のカギとなる要素は、決定的なスケーリングを最初に達成した企業に、不釣り合いなほど大きい報酬を与える。

誰もが正しいと認めるような方向を追求していたら、そのスタートアップはいかに魅力的に見えても、ライバルとの差別化で苦労するだろう。

2. 戦略のイノベーション

  • Blitz Scalingの実行においては、通常のビジネスルールだけではなくスタートアップのアーリーステージの経験やベストプラクティスとは全く違う戦略を取る必要がある

いつBlitz Scalingを始めるのか

  • Blitz Scalingを実行する前に収益モデルが決まっている必要は必ずしもないが、その場合は収益モデルが決まっていなくても投資を集められる必要がある
  • 攻撃的または防御的な理由で、大きな成果を出すには市場に素早く参入することが決定的に重要だと判断した時にBlitz Scalingを始める

そのタイミングの判断軸は以下の5つ

  1. 大きくて新しいチャンスがあるか

    • 十分な市場規模、高い利益率、支配的なリーダーがいない市場か

    Youtubeにとって、なぜふさわしい時だったのか?

    ついにネットワークがビデオをストリーミングできる能力をもった。誰でも携帯電話で動画を撮れるようになった。そして、大きな資金を必要とする賭けに出られる投資環境があったからだ。

  2. First Scalerになれるか

    • Blitz Scalingの目的はクリティカルマス (最小限必要な普及率) をいち早く獲得すること
    • 他の企業がFirst Scalerとなり、既にクリティカルマスを抑えてしまっている場合はBlitz Scalingは成功しない
    • 「市場に最初に参入する」のではなく「市場で最初にScalingする」プレイヤーになる

    ある市場に最初に参入すれば、あなたはその先見の明を称賛されるかもしれないが、最初にスケーリングを実行しなければ、ScalingしたライバルのWikipedia記事の脚注に載るだけになってしまう。

  3. 学習曲線を早く登ることの重要性

    • 先にスケールすればするほど、学習に必要なデータを集められ、その結果製品は改善され、さらにスケーリングしやすくなり、競合と差をつけられる
  4. 競合の脅威はどれほどか

    • インターネットにより世界中のプレイヤーが競合であり、スタートアップだけではなく大企業も競合という状況で脅威がどれほどかを考える

    企業がブリッツスケーリングに頼りたくなる理由は、大企業と戦う主要な優位性のひとつがスピードだからだ。スタートアップは素早く動くことでテクノロジーの進化が生んだ新しいチャンスを生かせる。大企業と同じペースでのろのろと進んでいたら、同じ土俵で戦うことになり、大企業の豊富な資力が大きな優位性をもたらすことは明らかだ。

  5. コストとリスクはリターンに見合うか

    • Blitz Scalingには大きなコストがかかるためリターンが見合わない場合は行うべきではない

    新たなコストと不確実性を受け入れることが有利に働かないのなら、伝統的なビジネスの法則に従ったほうが得策だ。そうすればブリッツスケーリングを実行すべき時が来たとき、会社は効率がよく管理が行き届いており、スケーリングに適した状態になっているからだ。

いつBlitz Scalingをやめるのか

  • Blitz Scalingはやめるタイミングが必ずある

Blitz Scalingは強力な戦略だが、永久に続くものではない。永遠に伸び続ける会社はない。市場は無限ではないからだ。Blitz Scalingを実行するのは、市場が大きいか、急成長しているか、できればその両方があてはまるときだ。市場の成長が止まったり、上限に達したりしたときは、Blitz Scalingをやめるべきだ。

  • 成長が止まってからでは遅く、以下のような前兆を捉えてBlitz Scalingをやめる意思決定をするべき
  1. 市場や競合と比べた時の成長速度の低下
  2. ユニットエコノミクス(顧客当たりの利益率)の悪化
  3. 従業員一人当たりの生産性の低下
  4. 管理コストの増加

繰り返しBlitz Scalingを行う

  • あるステージでスケールアップするために行ったことを繰り返しても次のステージではスケールアップできない

3. 組織・マネジメントのイノベーション

  • Blitz Scalingを行うと組織が急激に拡大する。その急激な拡大に耐えうるマネジメントを行う必要がある

8つのキーポイント

① 小さなチームから大きなチームへ

  • ファミリーと部族フェーズのチームは柔軟性があり、驚くほど適応力が高く、会社の戦略・戦術の変更にも素早く対応できるものである。
  • しかし、村フェーズ以上になると基本的なマネジメントが必要な平凡な組織になってくる。

「28年前に会社を始めたとき、私は組織というものを完全に軽視していた。全員がミッション重視であるべきだと考え、階層をつくらず全員に同じ報酬を支払うつもりだった。5年ほど過ぎた頃、効率的に経営するには、ものすごく平凡なことに集中しなければ目標は達成できないと気づいた」

  • 初期のメンバーは組織のスピード感に不満を感じるし、段々と自分たちが会社の意思決定に携われなくなっていることに疎外感を感じてしまう。

  • しかし、社員を意思決定に関与させることは運用上不可能なので関与させないのが正解

  • 「社員は成長すれば出世のチャンスはあるが、部族フェーズまでに重要なポジションだったから村フェーズ以降でも重要なポジションになれるわけではない。外部からエキスパートを雇ってきた場合にそのエキスパートよりも能力が低ければポジションは与えられない。」ということをはっきりさせておく必要がある

② ジェネラリストからスペシャリストへ

  • ファミリー・部族フェーズではスピードと適応力が必要であるため、頭の回転が早く不確実で変化の速い環境で様々な仕事をこなせるジェネラリストだけを採用するべきである。
    • いわゆる高学歴バリキャリエリートやスタートアップ野郎
  • しかし、会社が成長するにつれて、業務ごとに高いスキルと経験を持つスペシャリストが重要になってくる。
  • 村フェーズ以降はジェネラリストである初期の社員ではなく、外部から雇ってきたスペシャリストがリーダーになっていくためジェネラリストは不満を持ち、やめてしまう人もでる。
    • ただし、初期メンバーのジェネラリストはカルチャーや組織についての知識や新たな問題に取り組む力があるため、必要に応じて様々な機能を果たす役割として残るべき 都市・国家フェーズでは、割合ではほぼ全員がスペシャリストになる

③ マネージャーと幹部

  • 初期フェーズはマネージャーと幹部を1人の人が牽引することになる。
  • 村フェーズ以降は幹部が必要になる。幹部は将来成長が見込める人物よりも今すぐ必要なスキルを持つ人を外部からでも採用するべきである。
    • 過去にBlitz Scalingを実行したスタートアップで働き、問題を対処した経験がある幹部が理想

④ 対話型から放送型へ

  • 村フェーズ以降は経営陣がメンバーと対話するのは不可能になってくる
  • そのため、経営陣の考えを文面にまとめて共有したり、全社定例で共有したりすることが非常に重要になってくる

⑤ よりデータ重視へ

  • 組織が大きくなってくると対話によって意思決定することが不可能になってくる
    • 特にメンバーが経営層に意見を通すことができなくなってくる
  • そのため、データ分析チームを用意し、徹底的にデータをもとに議論・意思決定する風土を作る

「データは経営プロセスに不可欠な要素だ。意見で決めるなら、私の意見が常に勝つ。しかしデータは意見に勝る。だからデータを持ってこい。」とジェフ・ベゾスは言う。

⑥ シングルフォーカスからマルチスレッドへ

  • 初期は1プロダクトに集中するべきだが、組織がスケーリングしていくにつれて複数のプロダクトを提供するマルチスレッド方式へ変わる

⑦ 海賊から海軍へ

  • 村フェーズ以降は海軍のように考え始めるべき。
  • 基本的な規律や守りの施策を行っていく。
  • 国家ステージでは守備戦略として買収を行っていくことが不可欠になる。

ラリー・ペイジほど賢い人物でさえ、Googleの創成期にこれを身をもって学んだ。彼はGoogleのエンジニアリング部門にマネジャーを置かず、400人の社員全員をエンジニアリング担当副社長のウェイン・ロージング直属にしようとした。しかし失敗し、当時のCEO エリック・シュミットが本物の組織をつくることを了承した。どんな管理体制も、一時的である可能性が高い。村ステージの企業を部族ステージと同じ方法で運営することはできないし、都市ステージの企業を村ステージと同じ方法で運営することもできない。きちんとした組織がなければ、次のステージに成長させることはできない。

⑧ 創業者自身をスケーリングする

  • メンバーに対する権限移譲
  • 秘書などを用いた生産性の拡大
  • 学習

他の起業家と話すこと。有名な起業家だけでなく、自分より1年、2年、5年先を行く人たちと話す。そういう人たちからは、ほかとは大きく異なる重要な物事を学べる。長期的視点に立つ感覚は非常に大事だ。

直感に反する9つの法則

① 初期のカオスを受け入れる

  • 初期は役職にこだわらないカオス適応性がある人材こそが貴重である

② 今すぐ必要なスキルを持つ人を雇う

③ 「悪い」マネジメントを容認する

  • ファミリー・部族フェーズではマネジメントなど存在しないべき

ファミリーステージと部族ステージでは、昇進プロセスに気を遣う時間もなければ、誰かの名刺に「エンジニアリング部長」と書くか「プロダクト担当上級副社長」と書くべきかをじっくり議論する時間もない。

  • マネジメントが存在しない組織でチームを団結させる唯一の方法は「勝利のチャンス」

マネジメントのない中でチームを団結させる要因のひとつは、勝利のチャンスだ。

ドットコムバブルが弾けた後に多くのIT企業が破綻したが、ペイパルにはまだ成功のチャンスがあった。やるべき仕事は、日々取引量が増え続けるグラフを見ていることだけだった。

社員がふだん以上に忍耐強かったのは、成功したかったから、そして強力な高IQ集団の一員でいたかったからだ。

④ 恥ずかしいプロダクトを公開する

  • 詳しくはLean Startupを参照

スピードは本当に重要だ。早いスタートを切ることで、学習曲線を早く登り、優れたプロダクトをいち早く提供できるようになる。

重要な教訓は顧客の言ったことではなく、顧客の行動から見つかる。Linkedinの初期ユーザーは、その多くが我々の友人や家族だったので、「このガラクタはもっとユーザーがいないと役に立たない!」などとは言わなかった。代わりに彼らは「いずれはとても便利になりそうだね」などと言っていたが、招待状を大量に送ってくれることはなかった。

⑤ 火は燃えるがままにする

  • スタートアップは常にリソース不足

Blitz Scalingのどのステージでも、あなたの注目すべき問題や課題は、それを対処するために使えるリソースよりはるかに多い。

  • 緊急性と重要度から優先度を常に検討し、リソースが及ばないものは戦略的に放置する

⑥ スケールしないことをしよう

  • スピードと小さな検証を優先するためにかっこよくプログラムで解決するのではなく、泥臭く手動で対応したりすることも必要

⑦ 顧客を無視せよ

⑧ 資金は有り余るほど調達せよ

  • Blitz Scalingでは不測の事態が必ず起こる。資金に常に余裕を持て。

銀行の残高が今の半分だと思って行動しなさい。ちょっとした失敗や中途半端な最適化が、いつどこで偉大な起業家や会社をつぶしてしまうか分からないのだから。素晴らしいアイデアを持って正しい道を進んでいたのにお金だけがなくなった人をあなたもたくさん知っているでしょう。

⑨ カルチャーを進化させろ

  • カルチャーとは「物事をみんなで実行するための方法」である

  • カルチャーは繰り返しメンバー全員に意識付けし、優秀でもカルチャーが合わない人は採用しないことによって育てていく必要がある

小ネタ・事例

Blitz Scalingの由来

  • ドイツ語で「電撃戦」を意味するブリッツ・クリークから取って、雷のように一気に攻めることでスケールを狙うハイリスク・ハイリターンの戦略という意味で命名した

AWSのMVP

  • AWSは、複雑なクラウド機能を提供する前にまずS3からスタートした

所感

  • Blitz Scalingする会社には技術・プロダクトのイノベーションだけではなく、ビジネスモデルのイノベーションも必要であるというのは目から鱗だった
    • 最近でいうSaaS + Fintechのビジネスモデルの発明などはまさにこれに当たると感じた
  • Blitz Scalingする組織の各フェーズにおいて起こる問題と最適なハンドリングについてはスタートアップで働く中での実体験とリンクしており、教科書のような本だと感じた 参考
  • レジェンド本3冊を改めて通読し、それぞれの考え方は競合するものではなく、新規事業立ち上げにおいて
    1. 「事業を構想/計画するフェーズ」では、Zero to Oneの「未来は創れるという前提で、競争相手がいないほど大胆な未来を計画し、それに一点賭けする」
    2. 「事業を成立(PMF)させに行くフェーズ」では、Lean Startupの「仮説と検証を小さく最速で回す」
    3. 「立ち上がった事業を競争下でスケールさせるフェーズ」では、Blitz Scalingの「不確実な状況で効率よりスピードを優先し、あえて高いリスクを取って大きく踏むことで、競合を突き放す」
  • という各フェーズによって異なる考え方があるという整理ができた
Last updated on Sep 21, 2022 00:00 JST
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