Appleとネストのトニー・ファデル氏が書いたプロダクト開発についての本
20代という黄金期
二十代で犯しうる唯一の失敗は、行動しないことだ。あとは試行錯誤あるのみ。
これはかけがえのない時期だ。あなたの好機、リスクをとるべき時期だ。 たいてい三十代、四十代になると、この特別な時期は終わりを告げる。もはや自分の意思だけで何かを決めることはできなくなる。それでもかまわないし、もしかしたら幸せかもしれないが、それまでとは違う。支えなければならない人々の存在が、あなたの選択を形づくり、影響を与える。家庭を持たなくても人間関係、資産、社会的立場などが毎年少しずつ蓄積されていき、もうリスクはとりたくないと思うようになる。 でも社会に出て間もない頃、人生を歩み出して間もない頃には、大きなリスクをとった場合に起こりうる最悪の事態といっても、せいぜい実家に戻るくらいだ。
リスクに飛び込んだ結果、とてつもない大失敗に終わったとしても、それは速く学習し、次に自分が何をしたいか探すための最善の方法だ。 あなた自身が失敗するかもしれない。あなたの会社が破綻するかもしれない。食べ物にあたったかと思うような胃の痛む思いもするかもしれない。それで大丈夫。それこそあなたが経験すべきことだ。胃がキリキリと痛むような思いさえしていないというのは、ちゃんとやっていない証だ。たとえ崖から転げ落ちようとも、山をよじ登っていかなければならない。
マネージャーの第一の心得
部下が自分より優秀になることを恐れるマネージャーは多い。でもマネージャーというのは、メンターや親のようなものと考えなくてはいけない。愛情豊かな親が子供の成功を 望まない なんてことがあるかい? 子供には自分より成功してほしいと思うだろう
「ちょっと待った。ジェーンのほうが私より優秀なのに、マネジメントなんてできるのか? ジェーンがこの仕事で私以上の成果を出したら、まわりはジェーンがマネージャーになるべきだと思うんじゃないか」
正直に言おう。それは事実かもしれない。そして好ましいことだ。 あなたの部下がすばらしい成果をあげたら、それは会社に対してあなたが最高のチームをつくったと証明することになるからだ。 そしてあなたはその報酬を受けるべきだ、と。チーム内に常に少なくとも一人か二人はあなたの後継者となるべき人材がいる状態が望ましい。
データに依存して意思決定ができなくなるのを避けよ
直感を信じるのはめちゃめちゃ怖い。直感が働かない、あるいは自分の直感を信じられない人は多い。直感を信じられるようになるには時間がかかる。だから本来は主観に基づくべき経営判断を、データに基づいて決めようとする。しかし主観にかかわる問題をデータで解決することはできない。だからどれほどデータを集めても、結論が出ない。そうすると分析マヒ、考えすぎによる思考停止に陥る。
完璧なデータがそろうのを待ってはいられない。そんなものは存在しないからだ。腹をくくって未知の世界に一歩踏み出すしかない。学んできたすべてを動員し、次に何が起こるかを知恵を絞って予想しよう。人生とはそういうものだ。決断を下すとき、データは参考にはなるが答えをくれるわけではない。 グーグルのハードウェアデザインのバイスプレジデントを務めたアイビー・ロスは、優秀で思いやりがあり、洞察力はあるが私心はない人物だ。そのロスが常々言っていた。「データか直感か、ではない。データも直感も、だ」
顧客はプロダクトだけを見ているのではない
顧客は広告、アプリ、エクスペリエンス、カスタマー・サポートをそれぞれ区別して考えない。すべてあなたの会社、あなたのブランドとしていっしょくたに考える。 だが作り手は忘れてしまう。ユーザー・エクスペリエンスは顧客がプロダクトやスクリーンに触れた瞬間に始まると思いがちだ。原子でできているかビットでできているか、あるいは両者かにかかわらず、実際に「モノ」を使った瞬間だ。常に「モノ」を中心に考える。
カスタマー・ジャーニーの出発点から始めよう。プロダクトを市場に送り出すはるか以前に、マーケティング活動のプロトタイプを作成すべきだ。