『エッセンシャル思考』の著者グレッグ・マキューン氏の続編
人生は波
人生は潮の満ち引きのようなものだ。何事にもリズムがある。
力いっぱい押すべきときもあれば、リラックスして何もしないほうがいいときもある。
絶対やりたいことが多すぎる時はどうすれば良いか
- 『エッセンシャル思考』では、やることを絞り込む方法について書いていたが、 それでも多すぎるときには、どうしたらいいか?
もしも大きな石が多すぎたら、どうするのか。もしも絶対やりたいことが、瓶の大きさにまったく収まらないとしたら?
大事なことだけをやろうとしても、それでも多すぎるなら、あきらめるか、やり方を変えるしかない。
エッセンシャル思考は、「何を」やるかを教えてくれた。 エフォートレス思考は、「どのように」やるかを極める技術だ。
エフォートレスな精神
- 最小努力の法則
- 努力は過大評価されている
「困難な仕事をなんとしてもやり遂げてみせるぞ」と意気込む代わりに、「どうやったらこの仕事がもっと楽になるか?」と考えてみるのだ。
楽をするのが後ろめたく感じるほどに、努力の価値は過大評価されている。
- 考え方をあえて180度逆転させる
簡単に問題を解決するコツは、「いつでも逆から考える」ことだ。 最初に思いついたやり方を、ひっくり返してみる。後ろ向きにたどってみる。 そして「もしも反対のことが正しかったらどうだろう?」と考えてみる。 そうやってものごとを逆転させると、うっかり見落としていた前提に気づきやすくなる。 複数の視点から見られるからだ。逆からたどることで、思考の弱点がクリアになる。そして、新たなやり方に心が開かれる。
- 簡単な問題を見つける
「事業がうまくいかず苦戦しているなら、無理に頑張る必要はありません。もっと簡単にできるビジネスがないか、探してみたらどうですか?」
「ビジネス戦略でもっとも大事なのは、いちばんシンプルで、簡単で、価値のある問題を解決することです。実際、いちばん簡単な問題を見つけるのは戦略の要です」by リード・ホフマン
多大な犠牲を払って成功した人々と同じくらい、簡単に成功した人々もいる。ただ、苦労の少ない成功は、物語になりづらいだけなのだ。
たとえば、世界最強の投資家ウォーレン・バフェットは、投資の秘訣を「怠惰なくらい楽をすること」だと述べている。 ものすごい困難に立ち向かう会社は、投資先として賢明ではない。有望な投資先は、シンプルに経営できて、長期的に競争優位性のあるビジネスだ。
- 楽しいことと重要なことを"同じ"にする
- ex. ミーティングをお風呂に浸かりながら行う、ランニングをPodcastを聴きながら行う
エフォートレスな行動
- はじめの一歩を身軽に踏み出す
- 壮大なイメージを持ちつつ、身軽に一歩を踏み出し、長期間待ったNetflixの事例
創業者のリード・ヘイスティングスがレンタルビデオ店で借りた『アポロ 13』のビデオを紛失し、 40ドルの罰金を請求されたことだった。 こんな思いをしなくてもいいように、もっとマシな映画レンタルの方法をつくりたい、とヘイスティングスは考えた。
ヘイスティングスはNetflixをDVDレンタルサービスとして立ち上げ、「インターネットが宅配に追いつき、追い越す」未来を待った。
何年もかかる壮大な開発プロセスを描くこともできただろう。 インターネットの速度向上をシミュレーションし、さまざまなシナリオにおけるビジネスプランを描くこともできただろう。 DVDの郵送サービスに限っても、破損のリスクや返却率など、計算しなければならないことが山ほどある。 しかし彼がまずやったのは、1枚のCDを自分宛に送ることだった。 もしもDVDが配送中に壊れてしまうなら、何をどんなに考えたところでビジネスは不可能だ。 だから彼は共同創業者のマーク・ランドルフと一緒にレコードショップへ行き、中古のCDを1枚買った。 それからどこにでもあるギフトショップに入り、グリーティングカードを入れるような青い封筒を買った。 封筒に自宅の住所を書き、CDを中に入れ、切手を貼って送った。 「翌日、リードが届いた封筒を持ってやってきました」とランドルフは回想する。 「CDは破損せず、無事でした。僕らは顔を見合わせて言いました。『このアイデア、いけるんじゃないか? 』」 彼らは壮大なビジョンを持っていた。その完成形は、現在のNetflixのように大量のコンテンツを提供するグローバルなストリーミングサービスだった。
だが複雑で壮大なロードマップを描く代わりに、彼らは考えられるなかでもっともシンプルな一歩を踏みだした。だからこそビジョンの大きさに圧倒されることなく、先に進むことができたのだ。
- やらないことを最大限に増やす
「やらないことを最大限に増やす」にはどうするか、を考えればいい。 言い換えれば、最終的な目標が何であれ、価値を生みだすステップだけに集中すべきだということだ。 無駄な手順には機会コストがかかる。 本質的でないステップを取り除けば、そのぶん本質的なことに使える時間やエネルギー、脳のリソースが増える。
- ゴミ(=失敗)から始める
「1000個のビーズが詰まったバッグを持っていると想像してみてください。外国語で人と会話するとき、間違えるたびにビーズをひとつ取りだします。袋が空になれば、レベル1の達成です。早くたくさん間違えれば、それだけ上達も早くなります」
何か新しいことを学びたいと思いながら、難しくて怖気づいていないだろうか。 習得すれば生活や仕事に大きな価値があるとわかっているのに、道のりが長すぎてあきらめていないだろうか。 そんなときは「ビーズの袋」を自分なりにアレンジして、なるべく多く失敗することから始めてみよう。
PayPalの創業メンバーでLinkedInの共同設立者でもあるリード・ホフマンは、かつてチームに参入したばかりのベン・カスノーカに言った。
「速く動くためには、多少の失敗はつきものだ。 10〜 20%の失敗率なら問題はない。速く動けるほうが大事だ」
カスノーカはそのときのことを、こう振り返る。 「この比率を意識すると、自信を持って意思決定することができました。心がいっぺんに解放されたようでした」
最初にリリースした製品が恥ずかしくないとしたら、それはリリースが遅すぎたということだ。 あるいはこう言ってもいい。
「製品のリリースについていえば、不完全こそが完璧だ」
不完全さを受け入れ、ゴミをつくる勇気を持てば、私たちは始めることができる。 そして一度始めれば、だんだんマシなものができてくる。 そしていつかゴミの中から、あっと驚くようなブレイクスルーが生まれてくるはずだ。
- 一定の持続可能なペースを設定する
- 多少のブレは避けられないので「上限と下限を決めておく」のが良いアプローチ
アムンセンは出発したときから、毎日正確に 15マイルずつ前進することに決めていた。 それ以上でもそれ以下でもなく、きっちり15マイルだ。雨が降ろうが晴れようが関係ない。 ゴールが目前でも、一気に進んだりしない。 どんな日も 15マイルを超えることはけっしてなかった。 スコットが「凍った日」にだけ隊員を休ませ、天候のいい日には隊員を「非人道的なほどにこき使った」のとは対照的だ。 アムンセンは十分な休息を取ることにこだわり、南極点にたどり着くまで一定のペースを保ったのである。
どんなに周到な計画を立てていても、思わぬ邪魔は入るものだ。 … 上限と下限を設定すればいいのだ。 「X以上、Y以下」というシンプルなルールを設定し、必ずその範囲に収めよう。
エフォートレスの仕組み化
- 全てを「直線的ではなく、累積的=福利構造」になるように工夫する
本を1冊書いて、何年も印税を受けとっている作家は、累積的な収入を得ている。 基礎をしっかり学んで、さまざまな問題に応用できる学生は、累積的な学習をしている。 「毎日運動する」と一度だけ決めた人は、累積的な決断をしている。 半年休んでいても売り上げが入ってくる事業は、累積的なビジネスをしている。 貧しい人にマイクロローンを提供し、返済されたお金をまた貸しだすというモデルの社会起業家は、累積的な貢献をしている。 とくに考えなくても習慣的に行動できる人は、累積的な行動を身につけている。 子どもが楽しく手伝いをできるやり方を考え、何も言わなくても毎日手伝いをしてもらえる母親は、累積的な子育てを実践している。
- 重要なことを一度だけ学ぶ
累積的な成果を得ようと思うなら、原理原則に目を向けなければならない。
本の寿命は、その本の年齢に比例する。本が古ければ古いほど、その本が将来にわたって生き残る可能性が高いということだ(これをリンディ効果という)。だから本を選ぶときは、長く読まれている本を優先するといい。つまり、古典を積極的に読んでみよう。
- “シンプルな言葉で"人に教える機会を増やす
人に教えると、自分も効率よく学ぶことができる。 誰かに教える機会があるかもしれないと考えるだけで、学びの濃度は高まる。 集中力が増し、よりよく理解しようと耳を傾ける。自分の言葉で説明するために、根本的なロジックを意識するようになる。
P&G社のA・G・ラフリー元CEOは、これを「セサミストリートの法則」と呼ぶ 3。無駄に難しい言葉を使わないこと。頭のよさを見せつけようとしないこと。理解しやすく、復唱しやすいストレートなメッセージを選ぶこと。 もっとも重要なことを、もっともシンプルに伝えて、できるだけ多くの人に届けよう。
- 「不信のコスト」をなくす
人を信頼しないことによって発生するコストは非常に高い。
ウォーレン・バフェットは、従業員やビジネスパートナーを選ぶ際に、信頼を測る3つの基準を用いている。 その3つとは「誠実さ(Integrity)」「知性(Intelligence)」「自発性(Initiative)」だ。頭文字をとって「3つのIの法則」と呼ぼう。