北の達人コーポレーション代表の木下勝寿さんが書かれたマーケ本を読んだ。
以下、個人的に印象に残った部分を要約しつつメモ
マーケティングの全体像
- テクニカルマーケティングはファンダメンタルズマーケティングの一部
- ファンダメンタルズの領域とテクニカルの領域を行き来しながら行うのがマーケティング
ファンダメンタルズマーケティング
- 「ユーザー」「商品」「競合」の3つを理解した上で「誰に」「何を」「どう」伝えるかを考える
「商品」について調査する
商品の広告を作るためには世の中にある商品の中で、この商品"のみ"で言えることを調べて見つけ出さなければならない。
マーケッターは少なくとも消費者が疑問に思うであろうことを想像し、自分でちゃんと理解して伝えられる知識を持ち合わせていなければならない。
マーケッターは商品企画者や開発者からもらった情報をそのまま消費者に伝えるのではなく、自分で情報収集し、「売り」となる部分を再構築しなければならない。
何度も何度も消費者に話して反応を見ながら、この商品の売りの部分を探していく必要がある。 これはアンケートなどではなく、必ず対面でやるべきである。
「ユーザー」について調査する
一番良いのはターゲットユーザーに1対1でインタビューさせてもらうことである。 グループインタビューだとどうしてもよそ行きの答えになってしまうからだ。
ユーザーインタビューで最低限吸収すべきものは、「キーワード」と「インサイト」である。顧客インタビューの際におけるマーケッターの正しい姿勢は「インサイトを理解しながらキーワードを確認する」ことだ。
お客様のお考えは○○ということですね、ということは、○○○という言葉を聞いたら〝いいな〟って感じますか?」というように、その都度インサイトの理解が合っているか、そのインサイトを表すキーワードは何かを確認するのである。
インタビューでユーザーインサイトやキーワードをある程度つかんだら、Yahoo!知恵袋やAmazon、SNS(TwitterやInstagram)などでそのキーワードを検索して、同じような人の投稿などを読み込んでいく。そうすると、ターゲットの生活感を容易に頭に思い浮かべられるレベルで理解できるようになる。
「競合」について調査する
ターゲットユーザーのインサイトがつかめてきたら、彼らがどの検索エンジンで「どんなワード」で検索するかを考える。
ここで考えるキーワードは「商品起点」のキーワードだけではだめ。「ユーザー起点」でのキーワードを考える必要がある。
オリゴ糖の健康食品を販売する場合、「オリゴ糖 成分」などのキーワードは商品起点 オリゴ糖は便秘に効くため、便秘に悩むユーザーがどういう検索ワードで検索するかを考えるのがユーザー起点
「オリゴ糖」という商品起点の検索ワードで抽出できるのは「オリゴ糖に興味がある」という買う寸前の人だけであり、多くのユーザーを取りこぼすことになる。
そうして洗い出したキーワードから競合となる商品を選定する。
競合をユーザーにとっての「選択肢」と考え、なぜ他の選択肢ではなく自社の商品を選ぶのかの理由をドリルダウンしていく
「誰に」伝えるかを考える
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ターゲットユーザーを「ニーズの9段階」「商品起点の10段階」にそれぞれ分類して、どのクラスタに伝えるのかを考える。
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ニーズの9段階
- 対策の必要性に気づいていない。
- 対策の必要性に気づいてはいるが「悩みや痛みは一時的なもの」だと思っている。
- 対策の必要性を自覚しているし、悩みや痛みは一時的ではないと思っているが、何も手を打っていない(探してもいない)。
- 対策を色々検討し始めている。
- 対策を色々検討してかなり詳しい状態。
- 対策の手を打ち始めた(何らかの商品を買った)。
- 既にお気に入りの対策のための商品があり、満足している。
- お気に入りの商品はあるが、「他にもっと良いものはないか」と思っている。
- 色々使ったが結局満足するものはなかった。
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商品起点の10段階
- (そのジャンルの商品自体を)知らない。
- 知っているが、そこまで興味はわかず、使ったことはない。
- 知っているが、使いたくないと思っている。
- いつかは使いたいと思っているが、使ったことはない。
- 以前は使っていたが、今は使っていない(また使うかもしれない)。
- 以前は使っていたが、今はやめており、今後も使う気はない。
- 今も使っているが、良いものがあれば乗り換えてもよい。
- 今も使っているが、可もなく不可もなく、今のところ替える気もない。
- 今も使っており、満足しているので替える気がない。
- そのジャンルの商品が好きで、色々試したい。
「何を」伝えるかを考える
USP(Unique Selling Proposition) とは「世の中でうちの商品でしか提供できない価値」のこと。
ニッチ市場でシェア総取りを狙い場合や、まだ類似商品が存在しない市場に参入する場合は「他社にはない便益を与えられる」「今までになかった便益を与えられる」という部分をUSPにするべきである。
市場に類似商品が増えてきたら、徐々に「他社商品よりも高い便益を与えられる」「実績、権威性などの付加価値がある」というUSPにシフトしていく。
「どう」伝えるかを考える
広告は伝わらなければ意味がない。 「伝える」広告を作ろうという姿勢では一方通行になってしまうため、ユーザー起点で相手がメッセージを受け取るための仕組みを設計して作られている「伝わる」広告を作るべき。
ファンダメンタルズマーケティングの運用
お客様が商品を買うまでの様々な過程について、想像力を働かせながらマーケティング仮説を構築し、マーケティング施策を打っていく必要がある。
また、広告を出したことで得られたフィードバックデータから人の感情を読み取り、「なぜこのような画面遷移をしたか」「なぜこのような傾向が出るのか」を推測し、それに対して手を打つ。
つまり、データからいかに人間感情を読み取れるかが、ファンダメンタルズ運用においてはとても大事な工程になる。
テクニカルマーケティング
ABテストのやり方
ABテストは「どれが良いかわからないからユーザーに選んでもらう」ではなく、「仮説を立てて、その仮説が正しいか? 複数の仮説の中でどの仮説が最も正解に近いか?」を判断するためのものだ。
ABテストを実施する場合は「何を伝えるか」「どう伝えるか」のレイヤーを分離してテストをする必要がある。
「何を言うか」のABテストの時は、商品、ユーザー、競合のことを徹底的に調べ上げて、最初に100のネタをピックアップする。その100のネタの中で厳選した3~5個のネタでABテストをするのである。ABテストの結果、3~5個のネタの中に基準値を超える成果を出せているものがあればそれを正解とし、なければ残りの95~97個のネタの中から再度3~5個を厳選してABテストを行う。
間違っても適当に考えて思いついた、たった3~5個のネタでいきなりABテストをして、その中で一番数値がマシだったものを正解にしてはならない。
ABテストという名前でやっているとどうしても目の前に並んでいるABCの成果だけを見比べて判断してしまう。だからあえて名前に「X」を入れ、「AB-Xテスト」とし、XYZの存在を意識させるのだ。ちょっとしたことだが、このちょっとした意識づけが重要なのである。このように「AB-Xテスト」は、ABCの中から選ぶのか、それとも新たにXYZを作るべきなのかを同時に判断するテストであるが、これを実施するには「ゴールの数字」の設定が必要である。具体的にゴールの数値は「上限獲得単価」のことで、これがないとXを作る判断ができない。
広告のチューニング
データだけで判断して、進めていくと大きく間違う可能性がある。 また、先にデータを見るとデータが「正」という前提で見るので、重要な課題を見落とす。 正しい手順は以下である。
①先にクリエイティブを見る
②仮説を立てる
③データで仮説の答え合わせをする
④仮説には出てこなかった課題をデータから見つける
「データ」から「人間の行動パターン」を見つけ、そのパターンの背景を理解し、販促につなげることが本当のマーケティングだ。