決算が読めるようになるノートを運営しているシバタナオキさんが書かれた本
以下、個人的に印象に残った部分をメモ
決算を読む心得
- 決算短信ではなく、決算説明会資料から読む
- 決算はじっくり時間をかけて読むよりも、1社15分で読む
- とにかく読む量を増やすこと
- 時系列で1社を追うこと
大事なのは、決算を読む「量」を増やすこと。
そして、時系列で同じ会社の決算書を読み続けることです。ある会社の四半期決算を1時間かけて分析するより、同じ時間で1年分の決算を流し読みする方が、発見が多いのです。
また、同じ企業の決算を時系列で流し読みしていると、ある四半期の決算説明会資料では開示されていなかった数字が出てきたり、逆に開示されていた数字が資料からなくなっていたり、という変化にも気づくようになります。
決算を読む力をレベルアップさせるための3段階
1. ビジネスモデルごとに「方程式」を覚える
- 決算を読む際は必ず「そのビジネスの売上向上で重要になる指標」を数式として覚えておく
- そして、その数式の変数を理解し、暗記しておく
2. 変数を因数分解した指標を時系列で追う
- 1の変数がそのまま決算資料に載っていないことも往々にしてあるため、その変数を因数分解して決算資料に載っている指標から導けるようにする
- 必ず成長率 (対前年度比 / YoY)を確認する
- 株式というものの性質上、株式市場は成長率が全て
- 同じ売上、利益だったとしても成長率が違えば株価は大きく異る
3. 競合他社との「横の比較」を行う
- 類似企業の決算も分析し、横で比較することで初めてその会社の強みや市場の解像度が上がるなど、多くのものが見えてくる
- 具体的には類似企業間の違いを洗い出し、仮説で良いのでその違いの理由を説明できるようにする
M&Aに伴う財務・会計
- 大企業がスタートアップを買収する場合を考える
- 買収額(valuation)はマルチプルやDCFなどでの推定を基準にし、買い手と売り手の間で交渉して決定される
- 仮にスタートアップの買収額が100億円、営業利益が-1億円の赤字、簿価が10億円だとする
- ITスタートアップの簿価はほぼ調達金額とイコールであることが多い
- この時、大企業側が日本の会計基準の場合、大企業側の買収後のPLへの影響は以下のようになる
- 営業利益は合算するため-1億円
- 簿価10億円のものを100億円で購入したため、90億円分は「のれん代」となり、N年の減価償却で毎年の費用としてPL計上する
- つまり、のれん代は「本来簿価の価値しかないものを高値で買った分の余分に払ったコスト」と判断され、購入した「のれん」分の資産はN年で価値がゼロになるという前提とされていることになる
- 積極的にMAを行っている会社の決算資料では営業利益がのれんで小さく見えてしまうので、営業利益よりもEBITDAでアピールする事が多い
- しかし、買収は「投資」であり、将来の収益性を見込んで100億円で購入しているため、必ずしも90億円分が将来的にゼロになるかは分からない
- 一方、IFRS(International Financial Reporting Standards / 国際会計基準 / イファース)では、簿価と買収額の差額を「取得準備費」として、買収後のPLには計上しない
- その代わりに毎年「減損テスト」を行う
- 具体的には、購入した会社の時価評価をして評価額が下がっていた=損が出ていた場合に、その損失分をその年の費用として計上する
- 上記の例で翌年にスタートアップの時価評価額が60億円だった場合、90億円あった「のれん」の価値が50億円しかなくなったことになり、40億円が費用として計上される
- IFRSで決算を行っている会社の場合は、急成長企業のMAをしやすいというメリットもあるが、評価額が下がった場合に一気に損失が計上されるリスクがある
おまけ
ジェフ・ベゾスの株主向けレター
実のところ、これら2つのビジネス(ECとAWS)には関連性があります。 社内では、この2つのビジネスはそれほど違いません。 両社は、数少ない重要なビジネスの原理を重視し、それらに対する強い信念を持って行動するという独特の組織文化を共有しています。 それは、競合に対してよりも顧客に対する強迫観念、発明や開拓への情熱、失敗を恐れない態度、長期的な計画を立てる忍耐力、優れた経営に対する専門家としての誇りです。
AWSを始めた当初、大胆で普通じゃない賭けをしていると言われました。 「書籍の販売とどんな関係があるのですか?」と言いたかったのでしょう。 当時の主な事業だった「書籍販売」にこだわり続けることもできましたが、そうしなくて良かったと思っています。
実際、書籍販売からAWSのビジネスに活かしていることはたくさんあります。 顧客志向、試行錯誤を繰り返す、ロングタームで考える、そしてオペレーションを重視することなどです。
多くの企業が顧客中心であると言っていますが、有言実行している企業は少ないのです。 大抵のテクノロジー企業は、競合を見て経営をしています。 他社がしていることを確認してから、急いで追いつこうとします。 それに反して、AWSで構築している90~95%のサービスは、顧客からの要望を受けて構築されています。
Amazonは、大企業でありながらも、Invention Machine(発明し続ける会社)であり続けたいと思っています。
意思決定は、2つのタイプに分けられます。 後戻りできない一方通行のドアを開けるタイプ1の決断と、後戻りできるタイプ2の決断です。
組織が大きくなると、多くの「タイプ2の決断」事項も含めて、大抵の決断に厳しい「タイプ1」の意思決定プロセスを選ぶ傾向にあるようです。 それによって、最終的には進行が遅くなり、思慮に欠けたリスク回避をし、十分実験できずに、発明ができなくなります。