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100/ J.Y.Parkエッセイ 何のために生きるのか

J.Y.Park氏が自身の人生観について書いた本

J.Y.Park氏が自身の人生観について書いた本

人生の目標は愛だった

ところがまもなく、僕はもっと強烈な人生の目標を見つけた。そして、その目標は40歳になるまで僕を支配することになった。あの瞬間から、それまで僕がしてきたことはすべて、目標を達成するためのものになった。その目標とは、ズバリ「愛」だ。

始まりはこうだ。  同じクラスにペニーという女の子がいた。僕は気づけばその子のことをいつも目で追っていて、彼女の目、鼻、口、笑顔、話し方、そして茶目っ気のある性格まで、すべてがかわいく見えた。家に帰ってもずっと彼女のことばかり考えていた。そんな気持ちになったのは初めてだったので、この感情の正体がなんなのかもわからなかった。日増しにその感情は膨らんでいき、僕の心のなかにあるすべてのものを押し出してしまった。両親が喜んでくれたときの幸せ、マイケル・ジャクソンの音楽に合わせて踊っているときの幸せとは次元が違う。僕の心はペニーのことでいっぱいになり、それ以外に何も入り込む余地がなくなってしまったのだ。そのうちに、彼女を見ていることさえつらくなった。でも、告白する勇気はない。耐えられなくなった僕は、ついにペニーにガールフレンドになってほしいと書いたメモを渡すことにした。  告白のメモを手渡すと、後悔と不安が押し寄せてきた。次の日学校に行くまで、僕は人生でいちばん長い夜を過ごすことになった。翌朝、教室に入った瞬間、僕を見て困惑する彼女の表情から、直感的に彼女の答えがわかった。彼女は僕を傷つけないように気を使ってくれたが、耐えがたいほどの絶望感にさいなまれた。ペニーが僕のことを好きになってくれたらそれだけで幸せだ、それ以上は何も望まない──そう思っていたのに……。それが叶わないという挫折感をどうやって乗り越えればいいのかわからなかった。  でも僕は、そのことをきっかけに、異性を好きになるという感情がどれほどパワフルなものかを知った。そして、そういう感情を相手に届けて恋を実らせることが人生の確固たる目標になった。そのためには、特別にカッコいい男にならなければならない。

理想の女性に出会って目標が変わる

世界でいちばん特別な男にならなければ出会えないと思っていた理想の女性に、人生のどん底で出会ったのだ。

僕は、夢を叶えるにはふたつのことが必要だと思っていた。ひとつは、僕がいちばん特別な男になること。もうひとつは、その後に世界でいちばん特別な女性に会って結婚することだ。それなのに、いきなり特別な女性に出会ってしまったのだからうろたえてしまった。こうして、僕の夢の計画は完全に書き換えられた。それからは、世界でいちばん特別な女性に会うために成功するのではなく、今出会ったこの特別な女性のために成功することが僕の人生の目標になった。

長期で勝負する

そこで僕は10年後、20年後を見据えることにした。そのころになれば、どうせファンの数の競争ではなく、実力の勝負になるはずだ。だから今は未来に向けて準備しよう。人気で「トップの中のトップ」になれないなら、実力でのし上がってやる──そう決意したのだ。

20年後にトップに立つと決めた僕は、健康管理、ダンスと歌のレッスン、作曲の勉強に打ち込んだ。他の歌手が遊んでいたり寝ていたりする間、自分は努力しなくては。そう思って、僕は寸暇を惜しんだ。

人気は永遠に続くものではない。だから人気があるうちに頑張って実力を蓄え、大衆からリスペクトされる人間に成長しなければならない。そのハードルを越えない限り、人気が落ちるのとともに消え去るしかない。僕は、不本意ながらも自ら危機を招いたおかげで、一足先にそのハードルを越えることができたのだ。 I’m the last man standing!

愛を手にするも転落

この愛がいっそう特別なものに思えたのは、ふたりが出会ったタイミングと、一緒に積み重ねてきた時間があったからこそだ。彼女と出会って1年ほどして、僕はいきなり国民的スターになった。すると多くの女性が僕に好感を示してきたが、それは彼女の愛には及びもつかないものだった。彼女は僕がまだ将来の見えない歌手の卵だったころから、そばにいて励ましてくれたのだから。芸能人と一般人の交際だったため、紆余曲折も多かったが、僕たちは出会いから6年目でゴールインした。僕は28歳にして、ついに人生の究極の夢である「最高の女性との最高の愛」を手にしたのだ。

しかし、人生は映画ではなかった。  結婚してから少しずつ時間がたつにつれ、妙な戸惑いを感じるようになった。彼女と結婚して僕の胸をいっぱいに満たしていた幸せが、古びた風船のように少しずつしぼみはじめたのだ。ふたりのあいだには何の問題もなかった。時の経過とともに、ときめきが少しずつ冷めていっただけだ。だからといって100点の幸せが80点とか50点になったわけではない。それなのに深刻に感じられたのは、バカみたいに僕がいつまでも100点満点を維持できると信じていたからだった。僕は「完全で永遠の幸せ」「冷めることも、飽きることもない愛」が本当にあると信じ込んでいたのだ。

本当につらかったのは、彼女とのあいだには何の問題もないことだった。結婚してみると、彼女は思っていたよりずっと素晴らしく、謙虚で、高貴な人格を備えていた。ただ、結婚しさえすれば完全で永遠の幸せが得られると信じていたのに、実際の結婚はそういうものでないという事実を突きつけられて、僕は戸惑ってしまったのだ。そして、それでも何かを探し求め続ける自分の姿にも戸惑っていた。そこで結婚している友人や先輩に悩みを率直に打ち明けてみたが、返ってくる答えはいつも同じだった。 誰だってそうだよ。これ以上、何を望んでいるの? 結婚なんてそんなものさ。何を期待していたんだ? 早く子どもをつくって、子どもを生きがいにしなよ。

話が通じなかった。彼らはみんな、「完全で永遠の幸せ」を夢見ていなかったからだ。いや、夢はあったかもしれないが、それは不可能だと信じていたのだ。その代わりに「ささやかで確実な幸せ」という基準をつくり、「完全で永遠な幸せ」をあきらめてしまったようだった。

運とは何かを探求する

「運とはなんだろう?」  考えてみると、僕の人生において運の占める比重はとても大きかった。そして初めて気がついたのだ。僕のこれまでの成功も運がよかったからなのだと。

数えあげればきりがない。これらのどれかひとつでも欠けていたら、成功できなかったはずだ。それなのになぜ、僕はこれまで自分の力だけで成功できたと思い込んでいたのだろう。大きな壁にぶつかって、初めて悟ったのだ。成功と失敗には、運が大きく作用するということを。そして、この「運」というものの正体を理解しないまま努力を続けるのはむなしいと思うようになった。どんなに頑張っても、運が伴わなければまた失敗するからだ。「天は自ら助くる者を助く」、「人事を尽くして天命を待つ」といった言葉は一見もっともらしく聞こえる。だが問題は、これらの格言にはなんの根拠もないという点だ。   運とは、ただ偶然に訪れるものなのか?   それとも、運を支配する神というものが存在するのか?

論理的に考えた結果として聖書を信じる

なぜ聖書を信じるのかと誰かに聞かれたら、僕は即座にこう答えるだろう。 「数千年の歴史をすべて預言した本は聖書だけだからだ」  僕も理系の学生だったので、科学と聖書とではかなり矛盾があることはよく知っている。聖書によれば、アダムなど最初に創られた人間たちが1000歳近くまで生きたとされていて、人間が進化の結果生まれたことも否定される。しかし、未来をすべて言い当てる神の前で、科学にいったいなんの意味があるのだろう? 人間の科学は私たちが思っているよりもはるかに不完全だ。もし誰かがこれから一週間に起こることをすべて書き出して、それがことごとく的中したら、もはや科学は意味を失うのではないだろうか。預言は科学を超越した領域なのだ。それ以来、僕は聖書を真理として受け入れ、聖書のみことばのままに生きていこうと決心したのである。

生きる理由が変化する

こうやって、死ぬまでにひとりでも多くの人を天国に送ることが、僕が生きていく理由である。僕のように足りないところばかりで偽善的な人間が、イエスのおかげで分不相応にも天国に行けることが、あまりに心苦しく、恥知らずだからだ。だから生きているうちは神のために、できるかぎりのことをしたいと思っている。それをパウロは「果たすべき責任」、つまり「借りがある」と表現し、その借りを他の誰かに対して返すべきだと言った。

僕はこの借りをできるだけ返してから死にたいと願っている。死ぬまでにやるべきことを羅列した「バケットリスト(Bucket List)」というものをつくる人がいるが、新しい天と新しい地(訳注/人間の堕落が生み出した罪悪と苦痛が存在しない、神による完全な世界) こそ真の世界だと信じる者にとっては、この世で絶対にやっておくべきことはない。新しい天と新しい地には真の快楽と幸福が待っているからだ。だとしたら、僕のバケットリストに書き込まれるべきは、新しい天と新しい地ではできないことのはずだ。それは、たったひとつだけ。他の人たちの生命を救うこと──つまり、ひとりでも多くの人が天国に行けるように手助けをすることだ。僕がバケットリストをつくるとしたら、韓国人、日本人、アメリカ人など、僕が伝道を行うべき各国、各民族の名を記すことだろう。

Last updated on Dec 11, 2024 00:00 JST
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