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16/ Masters of Scale

リード・ホフマン氏のPodcast Masters of Scaleを書籍化した一冊

リード・ホフマン氏のPodcast Masters of Scaleを書籍化した一冊

以下、個人的に印象に残った部分を要約しつつメモ

最初から拡大を狙わない

  • 顧客から直接フィードバックを受け取って製品を改善していける初期こそ、最も飛躍を生み出せる黄金期である

製品を生み出しているとき、あるいは、企業の基盤を据えているときには、否応なく自分の手を汚すことになる。 労力を要する割には大した意味がない仕事をしている気にもなるだろう。 プログラミング、設計、顧客サービスの他、ユーザーへのオンボーディングも、カスタマーサポートに届く問い合わせへの対応までも。 しかし、これらの仕事は、まさに会社がこの先の何十年かでどこまで行けるかを決定する。

ホフマンに言わせれば、「これは起業家にとって、禅問答的な謎かけかもしれない。すなわち、スケールの第一歩は、スケールを求める己の欲望を断ち切ることである」。

  • 短期的にアテンションを集める施策を行っても、長続きすることは殆どない。それで仮に100万人のユーザーが獲得できても、すぐに消えてしまう「事業拡大という名の錯覚」に陥る。
  • 自社の製品に心の底から惚れ込んでくれる最初の100人と製品を磨き上げることが重要。

サム・アルトマンの記憶では、フェイスブックとツイッターが成功した後、誰もがそっくり真似たSNSをつくりたくなったらしい。 起業家たちは口々に「とにかく、別の写真共有アプリを開発するつもりだ」と言っていたそうだ。 Yコンビネータは、そうした起業家ではなく、もっと野心的なビジネスを目指すスタートアップに関心を持っていた。 なかでもサムが注目したのは、彼自身がbits-to-atoms companies(ビットからアトムまで扱う会社、コンピュータサイエンスから物理的なものまでの意)と呼ぶスタートアップだ。

エアビーアンドビーはこのようなスタートアップだった。 彼らは初期のユーザーの家に直接訪問して泊まったりしていた。

ブライアン・チェスキーは、さらに彼らから貴重なフィードバックを引き出す方法を編み出した。 今存在しているプロダクトをどう思うか尋ねるだけではなく、これからつくり出すかもしれないプロダクトについても尋ねるのだ。 たとえば、「僕らが何をしたら、びっくりする?」とか「このデザインをどんなふうに変えたら、出会う人みんなに話したくなるかな?」と。 こうして、彼はユーザーとともにエアビーアンドビーの将来像をさらに大きく大胆に膨らませていった。

  • 創設して間もない時期を、とにかく顧客があっと驚くようなアイデアを着想するために使うことをおすすめする

一度、究極の体験を思い描いて、そこから逆戻りして現実に落とし込む。そういう思考が必要なのだ。

事業アイデアを掴み取る方法

大きく成功する起業家たちは、ほとんどの場合、すでにどこかに落ちているアイデアのヒントをくまなく探す、いわば狩人である

彼らはビッグアイデアを探し求め、その気配を察知したら追いかける。 そのために、もっともインスピレーションが浮かびそうな状況に身を置こうとする。 そして、そうしたアイデアを顕在化させてくれる人々で自分の周囲をかため、あらゆるツテを使って機会と洞察を得ようと努力する。 ビッグアイデアを見つけるには、自ら能動的に探さなければならないのだ。

ビッグアイデアを探す時、過小評価してならないのはひとひねりの効果だ。

ちょっとした工夫が絶大なインパクトを与えることもある。

  • 他人とのディスカッションでアイデアは生まれる
  • 「このアイデアどう思う?」と聞くのではなく「このアイデアのダメなところはどこか?」と聞くべき
  • アイデアに意義を唱え、あらを探し、どこに地雷があるかを批判的に考えてくれる賢い人と忌憚ない意見交換を行う中でアイデアを磨き上げる

起業家の卵が犯す間違いのひとつは、長く自身のアイデアに固執することだろう。 ひとり閉ざされた部屋でアイデアが浮かんでくるのを待つよりも、自分のネットワークから確かな意見を与えてくれそうな人を数名選び、その人たちと会話するほうがいいということは私自身も学んできた。 自分のアイデアに磨きをかけるには、これしかないとさえ思っている。

私自身が一番いい考えを思いつくのは、私の意見に異議を唱える人たちや、私のアイデアの粗捜しをしてくれる人たちに囲まれているときだ。 大切なのは、あなたがもし内向的な発明家だとしても、自分が持っているネットワークを忘れないことだ。 アイデアに対して異論をはさんでくる人たち、創造力のある人たち、懐疑的な人たち、他にも多くの起業家たちと十分に話をするなかで、思考のペースは加速され、短期間に次のビッグアイデアにたどり着けるようになるだろう。

企業文化を構築する

  • 企業文化をあとから立て直すのは容易なことではない。企業文化は組織の形成期に固定されるものであるので、チームが小さい初期から慎重に形成するべき。

私は、時と場合によってはスピードを犠牲にしてでも用心して取り組むべきことがあると提言している。 そしてそのひとつが、創業して間もない時期のスタッフ採用だ。 会社を始めようとしているとき、最初にあなたが採用する人々は単なるスタッフメンバーではなく、あなたが築いていく自社文化の共同創設者だからだ。 会社の影響力は彼らのスキルや能力によって決まるが、会社の体質もまた、彼らの人となりによって決まる。

テクノロジー事業では、企業文化の中心メンバーは「第一原理」的な思考をする人々でなければならない。 盲目的に指示に従うのではなく、立証済みのプロセスに固執するのでもなく、第一原理的な思考をする人々は何事にも問題意識をもって取り組むだろう。 「会社にとっての最善策は?」「もっと他に良いやり方があるんじゃないか?」というふうにである。

ただし、最終目標は、見た目がそっくりの人たちや同じ考え方の持ち主を集めることではない。 もし会社が同一のタイプの人間で占められれば、盲点が巨大化して視野の極めて狭い組織になるだろう。

成長は時に早く、時にゆっくり

  • とにかく早い決断

グーグルの戦略としてあまり知られていない側面かもしれないが、グーグルが優位に立つために、比較的小規模な企業を買収するのはこれが理由だ。 「僕らは多くのエンジニアを擁している」とエリックは説明する。 「でも、たとえば、エンジニアたちが新しいプロダクトを製作するのに1年かかると仮定しよう。それに対して、費用はかさむが買収するという手もある。さらに、僕らはそのプロダクトを相当早く収益化できるとしよう。

となると、選択肢A[それを自分たちで製作して、しかも立派なプロダクトに完成させる]か、選択肢B[その企業を買収する。そして今すぐ実行する]の2択だ。 こういうときは常に、[今すぐ実行する]ほうを選ぶべきなんですよ」

  • 資金はいくら調達しても十分ではない

全く予測していない時に好機が訪れることもある。

プランBを十分に支えるだけの資金を確実に残しておくこと、さらに実験的な取り組みができるように費用を残しておくことが肝心である。

これまでの知識を捨て去る

  • 知ったかぶりではなく「好学の士」であれ

彼は自ら20年以上に渡って苦労して得た専門知識を脇において、ナイキをシューズ会社からブランドへと方向転換させた。

これは急速に成長する組織のリーダーなら誰もが、何度も直面する変化である。

ただ仕事のコツを身につけるだけでは足りないのだ。組織を真にスケールアップするには、習得した知識を捨て去ることも学ばなければならない。

しかし、これはカンタンなことではない。人間は過去に成功した戦略にしがみつく傾向があるからだ。

「あなたがここまでたどり着いた方法では、ここから先へは進めない」

これまで培ってきた知識を捨て去ることを厭わない姿勢は、スケールに不可欠なマインドセットなのだ。

私達はあくまでも永遠のβ版なのである。

なぜなら、同じツール、同じ知識、同じ戦法が延々と機能し続けることはない。 解決しようとしている問題が変化し、市場が変化し、ライバルが変化し、業界が変化し、そして自分自身も変化していくからだ。

ユーザーの行動に目を向けよ

  • ユーザーの言うことではなく、やることに目を向ける

アンケート調査は、対象者の気持ちを理解するのに非常に有効であるが、ユーザーが実際にどう行動するかを観察する必要がある。

ピボット

  • 中途半端な成功の罠

失敗したプロダクトを打ち切るのは簡単だが、スケールする見込みのないプロダクトを打ち切るのははるかに困難であり、また、その判断はより戦略的なものとなる。

  • ミッションという軸足は残して方向転換する

ピボットに成功したほとんどの起業家が、創業時に掲げた目標やミッションをすべて捨て去ることはなく、むしろそれだけは変えずに残している場合が多い。

  • ピボットの意思決定

「上官が私の命を守ろうとするのをこの目で見たからには、私も進んで上官の命を守りましょう」

ここに、ピボットを成し遂げる鍵がある。 従業員たちは、大事にされていると感じていれば、あなたをこれからも大事にし続けるだろう。 CEOとしてピボットを実行するときには、その最初のステップから主要チームとともに進めていく必要がある。 ピボットがあたかも共同決定であったかのように思わせ、最初から彼らを引き入れるのだ。 民主的である必要はないし、実のところ、民主的であるべきではないと私は思う。

結局の所、決断を下すのは創業者自身でなければならない。それがチームに対して負うべき義務だからだ。

  • 危機の時は、まず人間的であれ

ビジネスが危機を乗り越えようというとき、何をするだろうか? まず考えなければならないのは、ビジネスのことだけではなく、ビジネスに関わるすべての人たちのことだ。 危機にさらされたとき、何よりも重要なのは立ち止まってこう言うことである。 「まず、私をひとりの人間に戻らせてほしい。ひとりの人間として、自分が従業員とコミュニティと社会に責任を持っていることを確かめたいんだ。そのために今、私は何をする必要がある?」

人々への思いやりと気遣いから始めるといい。 会社と従業員のためだけではなく、コミュニティと家族と、そして社会全体のために。

リーダーシップ

  • 徹底的な透明性

徹底的な透明性が機能を発揮するには、組織内の人々が──とりわけ、決定権を持つ者たちが──何らかの決断を下すたびにその理由をはっきりとオープンにする必要がある。 レイは、すぐにその模範となる行動を開始した。 何かを決断すると、彼は毎回欠かさずあとから見直し、その決定を導いた基準や原理を文書として記録し始めたのだ。

  • 率直な意見は真摯に受け止めるが、意思決定はリーダーがする

「人々が不満もアドバイスも口に出して、大っぴらに討議する権利と、決断を下す権利とを混同しないように注意せよ」

全員が対等に討議することに難色を示す組織も一部にあるが、その共通する理由は、その種の討議によって社内に混乱が起きたり、あるいは、完全に線引きがなくなってしまったりすることにある。 しかしそうした事態も、リーダーがあくまでも重要な要件については決定権を持つということが明示されれば、容易に回避することができる。 ただし、リーダーたちは同時に、社内のどこの誰からの意見だろうと、その声を真摯に受け止める姿勢を貫かなければならない。

  • サーバント・リーダーシップ

リーダーとは「道を塞ぐ障害物を取り除く」者だという考えは、マリッサがグーグルでの元上司であるエリック・シュミットから学んだことだった。

「リーダーは、もう直接自分の手でプログラミングしたり、製品のデザインをしたりすることはないだろう。リーダーの任務は、チームに方向性を示して、メンバーの進行を邪魔するものを一つ残らず片付けることだ。彼らが立派な仕事をやり遂げられるように、それを阻むものはリーダーが予め取り除いて置かなければならない」

言い換えれば、リーダーは他のメンバーを輝かせるために、自分自身は地味でつまらない仕事を引き受けなければならないということだ。 これは典型的なサーバント・リーダーシップと言えるだろう。

リーダーが従業員を支配するのではなく、むしろ「奉仕者」として彼らの抱えた問題や必要性を理解し、その解決を支援するという考え方である。

Last updated on Dec 14, 2022 00:00 JST
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