メタップス創業者 佐藤氏の最初の著書
未来位先回りすることができる人
両者を分けているのは、パターンを認識する能力です。 彼らは総じてテクノロジーに理解が深く、経済、人の感情などの複数の要素を把握し、社会が変化するパターンを見抜くことに長けていました。 パターンを認識するにあたって、最も重要な要素となるのが、テクノロジーです。 社会の進化は、いつの時代もテクノロジーが 牽引 してきました。
- メタップスが「iOSではなくAndroidに注力する」意思決定をした際、「直感ではAndroidは使いにくすぎるのでこない」と思っていたが、MacOSに対するWindowsの拡大のパターンと照らし合わせて、Androidがシェアを伸ばすと予測した
当時の状況においては、Androidの使い勝手があまりにも悪かったため、Androidに賭けるという選択は周囲には受け入れがたいものでした。何より、 自分自身も直感的にはAndroidがこれから優勢になるという予想に納得していませんでした。
五分五分で意思決定する
9割の人がその未来を予見できたタイミングで意思決定をしても手遅れです。誰の目にもわかってしまえば、チャンスはチャンスではなくなります。 リアルタイムの状況を見ると自分も含めて誰もがそうは思えないのだけれど、原理を突き詰めていくと必ずそうなるだろうという未来にこそ、投資をする必要があります。あなた自身がそう感じられないということは、競合もまたそう感じられないからです。
私も起業して以来 10 以上の新規事業を立ち上げてきましたが、うまくいったものとうまくいかなかったものにはそれぞれある傾向がありました。自分も他人もうまくいくと考えていた事業は失敗し、自分も含め全員が半信半疑である事業は成功したのです。
周囲の人にもチャンスとわかるようなタイミングでは遅いのです。自分でも成功確率が五分五分というタイミングが、本当の意味でのチャンスです。 周りの人たちが一度話しただけで理解できるようだったら、考え直してください。逆に、首をかしげられたり、うまくいかなさそうだと否定的なリアクションをしてきたようなら、そこにこそチャンスはあります。
テクノロジーの変化を線で捉える
私が目の前の「点」を見てビジネスをしていたのに対して、彼らは社会の進化の流れを一本の「線」として捉えていたのです。
テクノロジーの世界には、浮かんでは消えていくいくつもの流行語のような言葉があります。
ほとんどの人にとって、それらは突然現れては消えていく流れ星のような存在でした。なぜ、いつそこに現れるのか、まったく予想がつきません。一方、GoogleやFacebookなどシリコンバレーの一部の企業は、創業者自身がコンピュータサイエンスに精通しているため、それぞれのトレンドの関係性を理解し、全体像がつかめていました。
原理に立ち返って考える
ある社会システムが人々のどのような「必要性」によって生まれてきたのか、に焦点を当てて考えてみると、その次の展開も 自ずと見えてきます。 その「必要性」をより効率的に満たすことのできるテクノロジーが普及したとき、社会システムに変化が生じます。
「必要性」とは、不確実な未来を予測するにあたっておおまかな方向性を示してくれる、コンパスのような存在です。
不確実性を味方につける「20%ルール」
不確実性とリスクの本質を分析した『ブラック・スワン』の著書ナシーム・ニコラス・タレブは、投資について、資金の 85 ~ 90%を確実性の高いものに投資し、残りの 10 ~ 15%はあえて投機的な、不確実性の高いものに投資してバランスを取れと語っています。このGoogleの 20%ルールも、「人間に不確実性は制御できない」という同じ価値観のもとに設計されています。
リーンスタートアップは過当競争下では意味をなさない
- リーンスタートアップ的な手法をとる企業が多くなると優位性がなくなる
どれだけスピーディに変化に対応して仮説検証を繰り返しても、競争が激しくなりすぎてしまえば、十分な収益を上げることはできません。 未来が予測しづらいから、予測を放棄し、変化にすかさず対応する。一見理にかなったこの戦略は、もはや戦略として意味をなしません。 変化を見抜くことが難しい時代だからこそ、社会全体のパターンを見抜き、的確に未来を予測し、先回りできた企業と個人が最終的には勝利を収めます。
100倍の成果を上げるために根本から考え直す
本当に大きな成果を上げたいのであれば、真っ先に考えなければいけないのは今の自分が進んでいる道は「そもそも本当に進むべき道なのかどうか」です。
いくら現状の効率化を突き詰めていっても、得られる効果はせいぜい2~3倍が限度です。あなたがもし 10 倍や100倍の成果を得たいのであれば、今自分が取り組んでいる活動そのものを見直す必要があります。
大きなリターンを出すためには、適切な時に適切な場所にいることが重要です。人間ひとりの努力によってできることは非常に限られています。努力に頼るよりも、大きな流れに乗る方が、はるかに速く目的地に着くことができます。
短期間で大きな企業をつくりあげた企業経営者に会うと、意外な共通点があることに気付きます。 彼らが共通して持っているのが「世の中の流れを読み、今どの場所にいるのが最も有利なのかを適切に察知する能力」です。
将来を加味する
将来的に新しい情報が得られるであろうことを考慮に入れた上で、一定の論理的な矛盾や不確実性をあえて許容しながら意思決定を行う ことが、未来へ先回りするための近道です。
- 今の自分の能力に基づいて意思決定してはいけない
「案ずるより産むが易し」という言葉もありますが、できないと思ってやってみたら意外に簡単にできたという経験は、誰にでもあるでしょう。 自分の能力を過小評価しているケースもあるでしょうが、その多くは、時間の経過とともに自分の能力が上がることを判断材料に入れていないのが原因です。
自分の経験からいえば、いきなりグローバルに事業を展開した当時は、自分が成功するとはとてもではありませんが、確信できませんでした。今ならどの国がどのぐらいの市場規模で、どのように構成されているか、どう攻略すべきかをすぐに頭の中に思い浮かべることができますが、当時は何もわかりませんでした。 それでもなぜ足を一歩踏み出せたかというと、自分の認識を信用していなかったからです。今の自分の狭い視野によってつくられた認識のほうが「間違っている」と考えていましたし、今だってそう考えています。自分の偏狭な認識に邪魔されて可能性を狭めてしまうのは、とてももったいないことです。
逆に「本当にできないこと」とはどんなことでしょうか。私は「本当にできないこと」とはその人が「想像もできないこと」だと思います。考え付きもしないことはやろうとしませんから、「できるかできないか」の検討の対象にすらなりません。
ルールがまだない場所を選ぶ
当時私は誰かがすでにルールをつくってしまった市場で戦っても得られるリターンは大きくない、ルールのない土地で勝負をしたいと考えていました。 「郷に入れば郷に従え」ではたいしたことはできません。ルールメーカーの顔を伺いながらおこぼれに預かるのが精一杯でしょう。そもそもなぜ海外展開を考えたかといえば、すでにルールが整備されている日本で事業を展開しても、大きなチャンスがないと思ったからでした。
もし何か新しいことをはじめるのであれば、ルールメーカーがまだ存在していない領域を選ぶことをおすすめします。当時のシリコンバレーのように、すでに多くの人から名指しされるようなフィールドにこれから飛びこむようでは、アクションが一歩遅れている可能性があります。
山田進太郎さんに、なぜIT業界に入ったのかを聞いたことがあります。彼の答えは「当時は、他の業界よりも優秀な人が少なかったから」というものでした。