人生の短さについて
人生は短くない
ひとの生は十分に長い。そして、偉大な仕事をなしとげるに足る時間が、惜しみなく与えられているのである。ただし、それは、人生全体が有効に活用されるならの話である。
われわれは、短い人生を授かったのではない。われわれが、人生を短くしているのだ。われわれは、人生に不足などしていない。われわれが、人生を浪費しているのだ。
あなたがそんなに長生きする保証が、どこにあるというのか。 あなたの思い通りに計画が進むことを、だれが許したというのか。
人生の残りかすを自分のために取っておき、善き精神的活動のために、もうなんの仕事もできなくなった時間しかあてがわないなんて、恥ずかしいとは思わないのか。 生きることをやめなければならないときに、生きることを始めるとは、遅すぎるではないか。
わたしはこう言いたいのだ。
あなたの人生の日々を監査してみなさい。 そして、査定してみなさいと。そうすれば、あなたは見出すことだろう。 あなたの手元に残る日々は、ほんのわずかな残りかすにすぎないのだということを。
未来に頼らず、現在を逃さず、過去と生きる
- 未来に頼ることをやめ、現在を逃さない
先延ばしは、人生の最大の損失なのだ。 先延ばしは、次から次に、日々を奪い去っていく。 それは、未来を担保にして、今このときを奪い取るのだ。 生きるうえでの最大の障害は期待である。 期待は明日にすがりつき、今日を滅ぼすからだ。 あなたは、運命の手の中にあるものを計画し、自分の手の中にあるものを取り逃がしているのだ。
なぜ、あなたはぐずぐずしているのか。なぜ、あなたは手をこまねいているのか。つかまえなければ、逃げていってしまうというのに。
- 過去は変わらないし、誰にも奪われず永遠に所有できる
過去は、なんの心配もなく、永遠に所有することができるのである。
現在という時は、一日一日と移り変わり、また一日の中でも、刻一刻と移り変わっていく。 これに対して、過去の日々は、あなたが命じれば、すべてが姿を現わすだろう。 あなたはそれを、意のままに、眺めることも、引き止めることもできる。 だが、多忙な人間には、そんなことをする暇がなくなってしまう。
過去の鉄人たちはいつでも時間を空けてくれる
閑暇の中で生きる
すべての人間の中で、閑暇な人といえるのは、英知を手にするために時間を使う人だけだ。 そのような人だけが、生きているといえる。
というのも、そのような人は、自分の人生を上手に管理できるだけでなく、自分の時代に、すべての時代を付け加えることができるからだ。
心の安定について
最後は自分を信じること
そういうわけで、きみに必要なのは、あの厳しい治療ではない。そんな治療なら、われわれは、もうおこなってきた。
むしろ、今、必要なのは、最後の仕上げとなる治療だ。それはすなわち、自分を信頼して、自分が正しい道を進んでいると信じることなのだ。
仕事について吟味すべき3つのこと
第一に、自分自身を吟味するべきである。
第二に、自分の仕事の内容を吟味するべきである。
そして第三に、その仕事を誰のために、また、誰と一緒にするかを吟味するべきである。
- 自分自身を吟味する
いちばん重要なのは、自分自身を正しく評価することだ。というのも、われわれは、自分の能力を過大評価しがちだからである。
人間の才能というものは、無理強いをしても、うまく応えてくれない。もって生れたものに逆らうと、努力も無駄に終わるのである。
きみのもって生れた力が導いてくれる方向に、向かっていくべきなのである。
- 自分の仕事の内容を吟味する
次に、われわれがしようとしている仕事の内容を正しく評価し、われわれの力量を、われわれの為そうとしていることと比較しなければならない。 なぜなら、仕事をする人の力量は、その仕事に必要な力量を、常に上回っていなければならないからである。
- 一緒に仕事をする仲間を吟味する
はたしてその相手は、われわれの人生の一部を捧げるに値する人なのであろうか。
心の安定のための10原則
- 自分の仕事に打ち込み、自分に許された場所で、自分の義務を果たすこと。そして、状況が悪化したら、自分から仕事を離れ、閑暇のなかで生きること
- 仕事を選ぶときには、自分の適性をよく考えるとともに、自分の力量で対処できない仕事や際限のない仕事は避けること。また、一緒に仕事をする、よい友人を選ぶこと
- 少ない財産で質素な生活を送り、運命に翻弄されないように気をつけること
- 自分の置かれた境遇に不平を言わず、それに慣れること。どんな運命に襲われるか分からないから、つねに警戒を怠らず、備えをしておくこと
- けっして、無意味で無益な仕事はしないこと。運命に翻弄されることなく、自分を保ち、逆境でも動じないこと
- 人々の欠点に絶望して嘆くようなことをせず、それを笑って受け止めるか、冷静に受け入れるかすること
- 正しい人間が不運に見舞われる姿を見ても、けっして絶望しないこと
- 自分を取り繕うようなことをせず、率直な生き方を心がけること
- ひととの交わりに疲れたら、孤独に逃げ込むこと
- 心が疲労したら、さまざまな方法で気晴らしを与え、活力を回復させること