Twitterの創業期の物語を書籍化した一冊
以下、個人的に印象に残った部分をメモ
過去の出来事についての人間の記憶は、時がたつにつれて変わる。ある会合がじっさいにあったという点で、ふたりの人間の記憶が一致することがたまにあっても、憶えている場所や日時がまったく違っている。だから、できるだけ入手した書類と、もちろんソーシャルメディアも使って、その出来事の場所と日時を確認するようにした。
オデオで働き始める前のジャック・ドーシー
- ジャック・ドーシーは28歳までフリーランスのエンジニア、ブロガーで有名になっていたエヴァン・ウィリアムズをカフェで偶然見かけてオデオに応募した
カフェ・セントロというコーヒーショップの窓ぎわの席に、その二八歳の若者が毎日座っていることに気づいたものは、ほとんどいなかった。ランチを食べにくる人々が出入りし、窓の外を歩いている人々がいたが、彼に目を向けたり、話しかけたりするものは、ほとんどいなかった。そのほうが彼も好きだった。たいがいヘッドホンをかけて、古いパンクミュージックを低い音で流しながら、パソコンのキーボードをなでるように指で叩いていた。
ジャックとエヴァンの哲学の違い
- ジャックとエヴァンはTwitterの哲学が最後まで合わなかったが、その2つの哲学が入り混じっていたからこそTwitterは成功した
ジャックは、ツイッターは「自分がなにをやっているか」をいう場所だと考えていた。エブは、ミニブログのようなプロダクトだと見ていた。ふたりとも、前の年に起きた小さな地震のときに、ユーザがツイッターを使ったやり方が、ツイッターの可能性を示す手がかりだと思っていた。
共同創業者 ビズ・ストーン
ビズはもともと政治的な人間ではないが、前の会社で陥ったような不運を避けようとして、ツイッターではもっと重要な地位がほしいと、何カ月も前から要求していた。ブロガーにくわわったときには、同社はすでにグーグルに買収されていた──かっこいい肩書きはもらえなかった。オデオに行き着いたときも、重要な肩書きはすでに分けられていた。いい会社にタイミング悪く入社するというのが、ビズのこれまでの仕事人生だった。ツイッターでおなじ罠に落ちないように、数週間前からエブとジャックに送るメールで、地位を求める運動をはじめていた。
なぜエヴァン・ウィリアムズが初代CEOではなかったか
「CEOにならないことを決めた」エブは椅子にもたれて、ジャック、ビズ、ゴールドマンにそういった。ツイッターとはかかわりを持ちつづけて、プロダクトのために指針や未来の構想を提案するつもりだが、オブビアス・コーポレーションにも集中して、アイデア孵化器からネット企業を生み出したい、と説明した。
Twitterの創業
「わかった。こうしよう」エブがいってから、また間を置いた。ジャックがCEOになる、ビズ、ジャック、エブを共同創業者とする。ゴールドマンはプロダクト担当バイスプレジデントになる。 ビズとジャックは、たちまち有頂天になった。 それまでずっと、ツイッターに私財を投じてきたので、ツイッターの株七〇パーセントを所有することにすると、エブは告げた。CEOのジャックは二〇パーセント。ビズとゴールドマンは、それぞれ約三パーセント。あとは現在のエンジニアと新しい社員の持ち分にする。 エブはさらに説明した。ツイッターはいずれ投資家のベンチャー資金が必要になるから、自分たちの持ち分は希薄化されるが、まだエンジニアが少数しかいないので、それは今後の課題になる。
USV フレッド・ウィルソン
ツイッターの経営陣は、ヤフーとの話し合いの前に、フレッド・ウィルソンに最初の投資を頼むことを決めていた。フレッドがツイッターの可能性を理解していると、エブとジャックが考えていたからでもある。だが、もっと重要なのは、フレッドがビジネスモデルにこだわっていないことだった。フレッドなら、ツイッター創業者たちにビジネスモデルをつくるよう強要しないはずだ──ビジネスモデルはあとでできる、とフレッドはいった。
2008年のTwitterの数値感
当時、投資家に送っていた基本情報で、ツイッターは数字を示している。社員は一五人。サービスに登録しているユーザは一二七万三二二〇人。ユーザの一カ月間のステータス・アップデートは一五〇〇万件近い。アップデートが世界的で、地球のあらゆる場所から来ていることを、アウトラインは力説していた。だが、あらゆる面で数字がのびているにもかかわらず、創業以来ずっと変わらない数字があった。その資料には、「売上=0ドル」と記されていた。一年前、フレッド・ウィルソンなどの投資家が出した資金で、いまも経費をまかなっていたが、その金もあっという間になくなりかけていた。
初代CEO時代のジャック・ドーシー
ビジャンとフレッドは、会社の財務面でもジャックが無能だったことを知った。売上はいまもゼロだったが、経費はその正反対で、サーバの使用料やテキストメッセージングの料金や給料支払いが増加していた。ジャックはずっと自分のノートパソコンで経費を管理し、間違った計算をしていた。それを見つけたエブは、友人で経験豊富な起業家のブライアン・メイソンに、ジャックと会って、会社の帳簿の管理を教えてやってほしいと頼んだ。だが、ジャックと会っているあいだずっと、ブライアンはホワイトボードとマーカーを使って、会計の基本を説明するはめになった。