ファーストリテイリングの柳井正氏が2012年に書いた仕事論についての本
自分に期待する姿勢
近頃は「頑張らない生き方」をすすめる本が 巷 にあふれている。だが、頑張らない人生には価値がない。私は「生きる」ことは、すなわち「頑張る」ことだと信じている。そうでなければならないとも思っている。 希望を持つには、人生は自分が主役だという信念、自分に「期待」するという姿勢が不可欠だ。 「俺はつまらない人間だから」ではなく、「自分はこんなことができるのではないか」と自分自身に期待することだ。人より少しでも得意な部分を必死で探し、一生懸命に磨いていく。
桁を1つ上げてみる思考法
- 目標の桁を1つ上げてみると、根本的な改善を迫られ、全く違うアプローチが生まれてくる
松下幸之助さんはかつて「5%より 30%のコストダウンのほうが容易」と言った。 5%のコストダウンとは今までの延長線上のコストダウンだ。ところが3割も一気に下げるとなれば、根本的な問題から考え直さなくてはならない。日本の危機はこれまでの「改革」「改善」では手の 施しようのないところまできている。現状の延長線上ではなく、深く考え抜いて、ゼロベースからの見直しをすることだ。
日本以外の国で売る、ただそれだけのこと
日本国内はそれほど消費は伸びていかないかもしれない。しかし、世界に目を向ければ 豊饒 で、成長する市場がある。そこを目指さないのはビジネスマンではない。日本は経済敗戦したけれど、個人が敗戦したわけではない。パリでも北京でもニューヨークでも、あるいは新興国のどこへでも、通用する商品を持って売りに行けばいい。ただそれだけのことだ。
長期で積み上げる
成功している人には必ず、そうした「修業」の時代があるのではないだろうか。 若い人に強調したいのは、一足飛びの成功はありえないということだ。ただし、毎日、少しずつ前進していけば、いつか成果を収めることはできる。 洋服の仕事に限らず、どんな仕事でも、その道で一人前になるには一生懸命やっても最低 10 年はかかる。待っていても、自分のために国や世間が何かしてくれるということはない。だから、他人よりも少しでも早くその道に飛び込んで努力した者が勝つ。
現実の延長線上をゴールとするのではなく、最終ゴールから逆算する
「本を読む時は、初めから終わりへと読む。ビジネスの経営はそれとは逆だ。終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ」
この一節を読んだ時、私は頭を殴られたような衝撃を受け、同時に、自分の甘さを痛感した。 まだユニクロ第一号店をオープンする以前で、カジュアルを扱う郊外店をやれば面白いかもしれない、と漠然とした構想だけは持っていた頃だった。 私は「おもい」を起点として、形にしていくことが経営だと信じていたのである。 経営とは現実の延長線上にあることを一つひとつ形にしていくことだと考えていたわけだ。 毎日、努力さえしていれば、その歩いた先に何かしらの結果が待っていてくれると素直に思っていた。
しかし、それでは「できるかできないか」がよくわからないうちに、「自分たちにはできない」と自己規定することが起きてしまう。 ちょっとでも障壁があると、すぐに方向転換したり、目標の修正をしてしまう。経営における「ブレ」とは、こうしたメカニズムで生まれてくる。
ジェニーン氏は「現実の延長線上をゴールにしてはいけない」と強調する。最終的な目標を明示して、その実現のための方法を規定し、組織全体で実行していくことが「ほんとうの経営」だと言っている。
仕事に向き不向きはない
従業員の成長を見ていると、つくづく仕事に向き不向きはないと思う。 仕事について若い人はよく「向いている」「向いていない」という。けれど、たいていの場合、それは錯覚だ。十分な経験もせずに「この仕事には向くけれど、あれはダメ」と思い込むことがおかしい。 私だって、商売を始めた頃は性格は内向的だし友だちも少ないから、商売には向いていないと思ったこともあった。でも、やってみれば意外にできた。半年や1年やっていれば、展望は開けてくる。まして 10 年やれば必ずものになる。
商売人は金がなくても持っているように振る舞え
「商売人は金がなくても、持っているようにふるまえ」。
よく「金がない。金がない」と言いながら商売している人がいるけれど、商売は信用だ。相手はちゃんと見ている。「金がない」とこぼしてばかりいる人間を信頼するビジネスマンはいない。別に派手な金の使い方をしろというわけじゃないが、金がないことを周囲に吹聴することはしない。
ビジネスマンの3つの基礎
- 仕事で学ぶ
- 人に会い、教えを請う
- 本を読んで仮説を持つ
ビジネスマンの基礎として必要なのは、まずは仕事の現場から学ぶことで、次が目的を持って人に会い、教えを請うこと。 そして、このふたつと同じように重要なのが本を読むことだろう。ただし、本を読むうえで忘れてはならないのは頭でっかちにならないことだ。ビジネスマンならば知識として蓄えるのでなく、自分の仕事に役立てるため、「自分ならこうする」と考え、仮説を頭に描きながら文字を追っていくことだ。
うんうんうなりながら読むことだ。 本は難しいもの、読むには時間と知識、そして集中力がいる。
ひょっとしたらの誇大妄想
会社でも同じだ。 「これくらいの成長でいい。他社と同じくらいの安定成長でいい」とトップが言ってしまったら、社員の気がゆるんで、たちまちつぶれてしまう。 大きな目的を持ち、私利私欲を超えて成長を続けることが個人と会社の存続にかかわってくる。
あの頃、僕よりも頭が良くて、行動力があって、金もブレーンも持っていた経営者はたくさんいたと思う。 私が持っていたものと言えば、 誇大妄想 とも言える夢、目標だけだ。 そして、他人にはしゃべらなかったけれど、世界を相手に商売しようとずっと考えていた。 おそらく、あの頃の僕からそんな夢を聞いた人がいたとしたら、その人はその場で腹を抱えて笑っただろう。 だが、今の日本には、誇大妄想とも言えるくらいスケールの大きな夢が必要だ。 ひょっとしたら、自分にはできるんじゃないかと思いこむところから夢は始まる。 何も考えずに、日々を 安穏 に暮らしている人にはチャンスもやってこない。
そう信じた。 そして、あの頃の私にとって、実現は程遠い夢だったけれど、方向性は間違っていなかった。 伸びたい、成長したいと思う人は大きな目標、夢を持って、日々の仕事にコツコツと精を出すことだ。
致命傷になるリスクは取らない
教訓だが、金のない人間がぼろ儲けを狙って冒険してはいけない。失敗が致命傷になる。一方、金のある人間なら冒険的な仕事も結果がいいほうに転がることがある。
責任を取る、矢面に立つ
仕事をするうえで、責任というのはつきものだ。責任とは、会社に対してだけでなく社会に対しても存在する。責任がない、ということはリスクもないということだ。リスクがなければ、プロフィットもない。また、責任があるということは、能力や権限を与えられている、ということでもある。責任のない仕事なんてつまらない。会社に対しても社会に対しても責任を持つことが経営者には求められている。