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2/ Zero to One

Peter Thiel氏が2014年に書いた名著

スタートアップ3大レジェンド本の一冊

再読して刺さった部分をメモ

あいまいな楽観主義ではなく明確な楽観主義

  • 「未来は不確実に進化していくもの」であるため、期待値とポートフォリオで意思決定する”あいまいな楽観主義”の考え方が主流になっている
  • だが、「未来は不確実なものではなく、自らの計画や努力によってより良い未来は創れる」と信じる”明確な楽観主義”こそ起業家が持つべき信条

Lean StartupではなくZero to One

  • 「未来を不確実なものとし、事前にあまり計画せずに、少しずつ改善する」というリーン・スタートアップの思想は、ドットコム・バブルの崩壊からシリコンバレーが学んだ教訓であり、それが未だにビジネスを作る手法の王道となっている
  • しかし、正しいのは全く逆で「未来は創れるという前提で、競争相手がいないほど大胆な未来を計画し、それに一点賭けする」というZero to Oneの発想だ
  • リーンは手段であって目的ではない。 大胆な未来の計画を持とう。

独占せよ

競争したら負け

  • 「完全競争下では長期的に利益を出す企業は存在し得ない」という経済学の原則に則り、永続的な価値を創造するためにはコモディティビジネスを行ってはならない
  • 競争した時点で負け、独占は成功企業の条件である
  • 競争は、存在しないチャンスがあるかのような妄想を抱かせる
  • ライバルが存在し、どうしても倒せないなら競争するより合併したほうが良い
  • 先手を打つというのは手段であって目的ではない。以降ライバルが出現しない最後の参入者(ラストムーバー)になるべきだ

独占の築き方

  • 「誰もまだ創っていない、価値のある企業はどんな企業か?」と考える
  • 独占できる小さな市場から始めよ。ニッチを支配したら、長期的に大きな市場を独占できるビジョンを持って、関連する少し大きな市場に徐々に拡大せよ。
  • ただし、市場が小さいことと存在しないことは違う
  • 独占に有効な以下の特徴を持っているかでビジネスを分析する
    1. 長期のニーズ
      • そのビジネスは10年後も存在しているか
    2. プロプライエタリ・テクノロジー
      • 2番手よりも10倍以上優れている圧倒的なテクノロジーが自社にあるか
    3. ネットワーク効果
      • 利用者の数が増えるにつれて、より利便性が高まるか
    4. 規模の経済
      • 固定コストが販売量の増加に従って分散されるか
      • 販売増加にかかる限界費用がほぼ0であるのが理想
    5. ブランディング
      • 本質的な価値提供によってコミュニティができ、その結果としてブランドは後から付いてくるもの

隠れた真実を探せ

  • 「賛成する人のほとんどいない、大切な真実は何か?」
  • 隠れた真実とは「難しいが不可能ではないもの」
  • これが独占に繋がる

なぜ人は隠れた真実を探さないのか?

隠れた真実は難しくなければいけないが、不可能でもいけない

原因 ① : 物理的なフロンティアがほぼなくなったこと

世の中のほとんどの人は知られざる真実なんてないかのように振る舞っている。

なぜ僕たちの社会は、知られざる真実なんて残っていないと思いこむようになったのだろう?

確かに、世界地図に空白はない。

君が18世紀に生きていれば、まだ発見されていない未開の地があり、冒険家になれた。

でも、現代において未知のものに出会うことはかつてないほど難しい。

原因 ② : 4つの社会トレンド

  1. 漸進主義
    • 一歩ずつ少しずつ物事を進めるのが正しいやり方だという発想
  2. リスク回避
  3. 現状への満足
  4. フラット化
    • グローバリゼーションによる世界の競争市場のフラット化
    • 「新しい何かが発見できるなら、世界のどこかで自分より賢い人たちが既に見つけているのでは?」と考えてしまう

隠れた真実の見つけ方

  • 隠れた真実は、ぶっとんだ理想を描き、そこに強引に目を向けて学び、調べなければ見つからない
  • 隠れた真実を探すべき場所は「他の誰も見ていない場所」である

べき乗則を意識せよ

  • べき乗則とは「たったひとつのことが他の全てに勝る」という法則
  • この世界は正規分布ではなく、べき乗則に基づいている
  • 人間は短期でしか物事を考えられない傾向があるが、長期で思考しないとべき乗則は見えてこない
  • VCにとっての隠れた真実は「ファンドの中で最も成功した投資先のリターンがその他全ての投資先のリターンよりも大きくなる」ということだ
  • ポートフォリオ理論によるリスク分散ではなく、長期で大きなリターンを生むものに数を絞って投資するべき
  • 起業家であれば長期で圧倒的なべき乗のリターンを生み出せる市場、自分の得意なことに一点集中するべき

マフィアを組織しろ

  • 大前提、1人では0から1を生み出すことは難しいため、チームを作る必要がある
  • 「創業期がぐちゃぐちゃなスタートアップは後で直せない」という法則があり、初期のチームビルディングは非常に重要

創業期のチーム

  • 創業期のメンバーは「自分と似ている、同じ考え方の」「報酬ではなくイノベーションを起こすことにモチベーションと使命を感じている」「スタートアップ野郎」を集めるべきだ
  • 創業者選びは、結婚と同じなので、スキルだけではなく「創業者がお互いをどれだけよく知っているか」「一緒に上手くやっていけるか」も重要であり、起業前に様々な経験を共有している方が良い
  • 初期の取締役は3名が理想的、多くて5名までにするべき

メンバーのインセンティブを揃える

  • スタートアップはできる限りキャッシュよりもエクイティでの報酬を多くしてメンバーのインセンティブを「短期的な利益ではなく、将来価値を上げること」に揃えるべき
    • コンサルタント、パートタイム社員、リモート勤務などは全て上手く行かない。
    • 仲間が同じ場所で四六時中一緒に働いて居なければインセンティブや方向性が揃わない
  • 現金よりも会社の所有権が良いという人は、長期的な志向があって会社の将来価値を上げることにコミットしていると判断できる
  • ただし、当然だがメンバー全員に同じ数の株式を与えるのは良くない。
  • どれだけ頑張っても完璧にフェアな配分は不可能なので、株式やストックオプションの比率については社内に開示しないほうが良い。

    持ち株割合を全社に公開するのは、会社に核爆弾を落とすようなものだ。

  • 給与や福利厚生などにつられて入ってくるような人材はスタートアップの文化を壊しかねない
  • 採用市場においても給与や福利厚生で待遇競争をしてはならず、会社のミッションやメンバーと一緒に働きたいと思える、相性が合うかで勝負しなくてはならない

責任を明確にし、自律的に仕事をする

ペイパルの経営者として僕が取った最善の策は、1人に1つの責任を任せることだった。

スタートアップは役割が流動的なので社員が同じ仕事を競って、争い事が起こりやすいが、各社員の役割をはっきりさせることで、社員間の対立が減った。

CEOの給料

  • スタートアップはできる限りキャッシュよりもエクイティでの報酬を多くしてメンバーのインセンティブを揃える必要がある
  • CEOの給料が低ければそれが全員の基準になる。CEOの給料を控えめにして、それを現金報酬の上限にすると良い。

Selling の重要性

差別化されていないプロダクトでも、営業と販売が優れていれば独占を築くことはできる。

逆のケースはない。

プロダクトがどれだけ優れていても、強力な販売戦略の支えが必要になる。

コンピュータとどう向き合うか

大きな価値を生み出す未来の企業は、コンピュータ"だけ“でどんな問題を解決できるかとは考えないはずだ。

人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどのように助けられるか と考えるだろう。

小ネタ・事例

ペイパルのドットコム・バブルに乗った資金調達

  • ペイパルはまずはユーザー数、その結果として少額の決済手数料でも利益が出せるようになるという考えで、新規登録者へのキャッシュバックや友だち紹介施策により、コストをかけてユーザー数を伸ばした。
  • その施策をやりきるために資金が必要だったため、バブルがいつか終わることが分かっていた経営陣はバブルに乗って資金調達を急いで行った。
  • 2000年3月に資金調達を完了すると同時にバブルが弾けた。

大胆な計画を持っていたザッカーバーグ

  • 2006年7月にYahooがFacebookに10億ドルで買収提案をした時、周りは検討の余地ありと考える中、マーク・ザッカーバーグは「ここで売るとかありえない」と一蹴した。
  • マーク・ザッカーバーグはFacebookをどうしたいかという大胆な未来をはっきりと思い描いていた。

コンピュータとの向き合い方を体現したPalantir

  • クレカ詐欺によって大きな損失を出していたPayPalはソフトウェアの自動詐欺検出アルゴリズムだけで取引をフィルタリングしようとした。
  • しかし、詐欺師らは手口を柔軟に変えてくるため、アルゴリズムだけでは検知しきれないことが分かった。
  • そこでアルゴリズムで疑わしい取引フラグを立てて詐欺取引を絞り込み、人間がそれを見て最終判断を下すようにしたところ、対策が上手くいった。
  • このAMLシステムがFBIに求められ、その延長でPalantirを創業。
  • PalantirはPayPalのAMLシステムと同じ「人間が難しい問題を解決するのをコンピュータがどのように助けられるか」という発想でソフトウェアを提供し、成功を遂げている。

テスラ - 7つの質問に全て答えたスタートアップ -

  1. テクノロジー
    • 既存自動車メーカーにも求められるほどのバッテリーパックやモーターの技術
  2. タイミング
    • 環境ビジネスブームだった2009年に、ブームであり一度きりのチャンスであると見抜いた上で巨額の補助金による資金調達を成功させた
  3. 独占
    • 電気自動車、バッテリーマネジメントという壮大な計画を持った上で、「ハイエンドの電気スポーツカー市場」というニッチを独占するところから始めた
  4. チーム
    • イーロン・マスクは最高のエンジニアであり、最高のセールスマンでもあった (実績もあった)ため、優れた人材を集められていた
  5. 販売
    • ディーラーに頼るのではなく、自社の販売網を初期段階から構築していく戦略を取った
  6. 永続性
    • 他社よりも圧倒的に早期に始めてブランドを構築していた。自動車は高額な買い物であるのでブランドが非常に重要であり、覆すのが難しいため、永続性があった。
  7. 隠れた真実
    • テスラは環境ビジネスへの関心が流行に左右されるものだと分かっていた
    • そこで「地球に優しい」という点を推してブランドを作るのではなく、単に乗っているだけで「かっこいい」自動車としてのブランドを有名人などにアプローチしながら構築した。

所感

  • スタートアップでの経験がある程度できてから改めて読むと、信じられないほど刺さる部分が多く、完全にバイブル本だと感じた。
  • 「リーンは手段であって目的ではない」というパンチラインには頭を殴られたような衝撃を受けた。様々なプロダクト開発の経験を積む中で、頭が凝り固まっていたのを感じた。
  • 「いつから現代にはもうフロンティアがなくなっていると”錯覚”していた?」という藍染惣右介の名台詞を決められた時には、長く生きて知識が増えるうちに陥りがちな思い込みだと感じ、「無知な素人のようにゼロベースで考え、玄人のように実行する」という教訓を改めて胸に刻んだ。
  • 創業期の採用は「自分と同じ考え方の」「報酬ではなくイノベーションを起こすことにモチベーションと使命を感じている」「スタートアップ野郎」を集めるべきだという話は、私の実体験からも非常に共感した。
    • まさに「言うは易く行うは難し」だが、ペイパルマフィアと称されるように、実際にPayPalではExit後に金銭的報酬が得られても次の起業をするようなメンバーを集めていたというのが圧巻である。
  • Niche to Winの発想、Learning Animalを採用する、Build and Sell などの要素が盛り込まれており、共感するところが多いと同時に金言の宝庫のような本だった。
Last updated on Sep 07, 2022 00:00 JST
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